研究課題/領域番号 |
19K19649
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研究機関 | 天使大学 |
研究代表者 |
船木 沙織 (大竹沙織) 天使大学, 看護栄養学部, 講師 (00714396)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 原爆傷害調査委員会 / 遺伝学調査 / 助産婦 |
研究実績の概要 |
本研究は原爆障害調査委員会(ABCC)が実施した遺伝学調査におけるABCCと助産婦の連携の実際、妊産褥婦と新生児およびその家族に対する活動の実際を明らかにすることを目的とする。令和元年度は本研究の基盤となる作業として、遺伝学調査に関する会議録、遺伝学調査に協力した助産婦に関する資料収集および分析であり、以下の成果が得られた。 1)遺伝学調査に協力した助産婦に関する国内の史料調査について 遺伝学調査に協力した助産婦に関する史料を探索するため、広島県および長崎県助産師会、広島平和記念資料館、長崎原爆資料館など、長崎県、広島県内の図書施設に所蔵されている資料の検索、および施設担当者から、本研究に該当する史料に関する情報提供を受けた。その結果、これらの施設で所蔵する遺伝学調査に協力した助産婦に関する資料に限りがあることが把握できた。 2)遺伝学調査においてABCCが日本の助産婦に課した任務について 1)の結果から、国内に所蔵されている資料に限りがあり、本年は、国立国会図書館憲政資料室所蔵のPHWから発行されたABCC関連文書、Daily Journalを分析し、遺伝学調査においてABCCが日本の助産婦に課した任務について検討した。その結果、遺伝学調査における助産婦の任務は出産状況の正確な報告であった。ABCCは「長期にわたる正確な出生調査記録」を必要としており、助産婦に謝礼を支払うことで正確な記録の収集に努めたと考える。当時、日本の出産の約90%が開業助産婦による自宅出産であり、助産婦による出産状況の報告は遺伝学的調査において重要な任務であったと考える。なお、分析の結果から得られた知見は2020年8月の日本看護研究学会第46回学術集会にて発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究遂行に向けて、本年は遺伝学調査に関する会議録、遺伝学調査に協力した助産婦に関する資料収集および分析が目標であり、国内に所蔵されている資料探索は進展したが、米国に所蔵されている資料探索に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
国内に所蔵されている史料に限りがあることから、米国テキサス医療センター図書館にて遺伝学調査を考案した研究者らの日記、書簡など私的文書などを収集し、史料分析を行う。令和2年度は史料分析と並行し、文字資料分析から得られた内容をもとにインタビューガイドの作成し、遺伝学調査に協力した経験のある助産婦および遺伝学調査に協力した助産婦から当時の状況について話を聞いた経験のある助産婦の面接調査を実施する。ただし、対象者が得られなかった場合は、一次史料である文字資料を中心に分析を行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
広島県、長崎県の図書施設担当者と該当史料の探索についてメールでやり取りしていたが、史料収集を予定していた期間に図書施設が閉鎖していたこと、本年は米国調査を実施しなかったため旅費の執行額が予定よりも少なくなった。令和2年度も史料調査を継続するため、旅費として使用する予定である。
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