研究実績の概要 |
本研究は原爆障害調査委員会(Atomic Bomb Casualty Commission:以下ABCC)が実施した遺伝学調査におけるABCCと助産婦の連携の実際、妊産褥婦と新生児およびその家族に対する活動の実際を明らかにすることを目的とする。 研究期間を通してインタビューの該当者が見当たらなかったため、Archives & Rare Book Collections for The TMC Library, McGovern Historical Centerにて収集した1951(昭和26)年から1953(昭和27)年のABCC遺伝学調査における会議録を中心に分析した。 結果、ABCC科学者と助産婦は日常的に接触し、遺伝学調査の目的や内容について議論を重ね、連携していたことが示唆された。ABCC科学者は助産師から提案された実施における詳細な意見や、母親の気持ちを配慮するよう提案された内容をくみ取り調整を行っていた。遺伝学調査は助産婦の出産報告書が必要不可欠であり、占領期においても助産婦はABCC科学者に対等な立場で提言し、調査を受ける母親や家族の気持ちを代弁する役割があったと考える。一方、ABCC科学者は助産婦が意見を述べやすい体制づくりを心掛け、助産婦と密接な連携ができるよう心掛けていたことが明らかとなった。今後は、ABCC遺伝学調査を受けた家族や当事者の記録等を分析し、当事者と遺伝学調査に関わった医療職およびABCC研究者の視点から遺伝学調査におけるABCC助産婦の活動について考察を深めていく必要がある。
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