本研究の目的は、不安症の診断基準は満たさないが、生活に支障や苦痛が生じている産後の不安をもつ母親を支援するために、産後に特化した不安尺度を開発し(以下、本尺度)、産後の不安に影響を及ぼす要因を明らかにすることである。 本尺度開発にあたり2020年度までに97項目のアイテムプールを作成しており、今年度は尺度の信頼性妥当性の検証および産後の不安の関連要因の探索を行った。はじめに、母性看護学、精神看護学、公衆衛生看護学の教員および小児看護師の計6名で内容妥当性を検討し、内容妥当性比(CVR)0.67以上の67項目を質問項目として採用した。つづいて、生後6か月未満のこどもを子育て中の母親3名にプレテストを実施し、回答時間、質問のわかりやすさ等を確認した。その後、全国の産後6か月以内の女性500名を対象にWeb調査を実施し、2週間後に本尺度の信頼性を検証するための再テストをWeb調査にて行った。有効回答470名の分析の結果、3因子17項目の産後の不安尺度が完成した。本尺度全体および各因子のCronbachα=.784~.899であり、再テスト法による信頼性係数はα=.765であった。併存妥当性においては、本尺度とGAD-7(r=.600/p<.001)、STAI状態不安(r=.595/ p<.001)に有意な正の相関がみられ、本尺度の信頼性と妥当性が検証された。また、産後の不安に関連する要因として、母親の年齢、負のライフイベント、特性不安、精神疾患既往、出産満足度、こどもの人数、こどもの育てやすさ、相談できる人の有無、経済的不安定、コロナ禍における生活の不自由さがあげられた。
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