研究課題/領域番号 |
19K19669
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
石田 史織 信州大学, 学術研究院保健学系, 講師 (20710065)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 発達障害児 / 父親 / 家族支援 / 自己理解 / 家族機能 |
研究実績の概要 |
昨年、再検討を行った研究仮説「家族機能が十分にはたらいている家族は、困難な育児と言われる発達障害児の育児を担い、児の成長・発達を促すことができる」を検証するため3つの調査を計画・実施した。 調査1:長野県発達障害サポートマネージャーと県内療育施設の専門職(11名)へのインタビューを実施し内容分析を行った。その結果、発達障害児の育児をうまく担えている家庭と困難さを抱える家庭の父親の特徴、子ども・配偶者・支援者等への影響を抽出し、構成する6カテゴリーと下位項目40項目が生成された。その結果を元にそれらの関連性を構造的に示した。父親自身の性格や意識、思考、コミュニケーション方法などが含まれる40項目を自己理解に必要な項目「自己理解項目」と定めた。 調査2:定型発達児を持つ夫婦を対象としたオンラインアンケート調査の実施。調査1で得られた発達障害児の育児をうまく担っている父親の自己理解項目(40問)と、育児ストレス、コーピング、ハーディネス等、家族機能を高め育児に必要な要素を既存の尺度を用いてアンケート調査票を作成し、10大項目110問の調査を行い、206組の夫婦から回答が得られた。父親の特徴項目の因子分析を行った結果、4因子構造 34項目で妥当性が得られた。また、夫婦間のペアデータを比較したところ、結果の相違がほぼ見られなかったため、信頼性がある結果が示された。 調査3:調査2で得られた結果から、父親の自己理解項目(34問)と調査2同様の家族機能を高め育児に必要な要素調査票を再構成し、発達障害児もしくは疑い児の夫婦を対象に調査を計画した。しかし、5社の調査会社へ相談したところ夫婦間のデータマチングができない、データの精度が保てないとう理由で実施できず、幼児期の発達障害もしくは疑い児であること、夫婦揃って回答できること等の条件にマッチする対象を集めることが困難となり実施が間に合わなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
調査会社などへの委託も困難なことに加え、発達障害児または疑い児の両親の離婚率は高く、夫婦そろって回答が得られる対象が非常に少ないこと、近年、育児に手がかかる幼児期の世代の親は家族会などに所属しない傾向にあり家族会の存続が危ぶまれている状況にあること等、特異的な条件下でのデータ収集を計画している。様々な関係者に協力を依頼し内諾をいただいているが、当事者からの十分な回答が得られるには時間を要することが考えられる。今後も多くの協力者に依頼し、早急にデータが得られるよう進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は調査3を早急に実施し、尺度の完成とプログラムへの活用に関する提案を目指す。データの信頼度と妥当性を担保するために、対象者の条件は変えず最低200組の夫婦のペアデータを収集することを目標に、様々な機関に協力を要請しデータ収集を確実に行いたい。そのため、昨年度末、県内のサポートマネージャー、全国規模の発達障害関連の家族会の理事、代表に内諾をいただき調査実施の準備を進めた。それらの機関などから、正式にご了解いただき療育センターや家族会の参加者等に調査を実施する。 調査結果が得られた後、定型発達児の父親と発達障害(疑い含む)児の父親との因子モデルの違いなどから特徴を見出すこと、子供の成長発達や配偶者の育児ストレス等との関連も検証し家族が機能し、子育てがうまく担える父親の条件に関する尺度を考案し、現在の家族支援プログラムへの活用を検討する。
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