令和5(2023)年度はインタビュー調査実施に向けて、再度国内の障がい児・者のセクシュアリティ教育に関する文献の文献検討を行い、その結果をもとにインタビュー内容を再構成した。令和5年度中にインタビュー調査実施予定であったが対象者選定に時間を要し、データ収集まで至らなかった。研究目的の一部達成のため、文献検討の結果を報告する。文献検討では、障がい児・者に関わる教員、養護教諭、支援者、保護者の多くがセクシュアリティ教育の必要性を感じていた。教員・養護教諭のほとんどは、性被害・加害予防のため、性的な発達がみられたため、男女の相互理解のためなどの理由で必要性を感じていたが、実際は必要と感じている内容の半数程度の実施にとどまっていた。実施上の課題として、障がいの種類や発達段階の多様性、指導内容・方法が具体的に示されていないこと、教え方がわからない、資料や教材の不足などの課題が多く挙げられ、障がいの種類や発達段階に応じた具体的な指導内容や方法の提示が必要なことが明らかとなった。また、保護者はセクシュアリティ教育を必要と考えているものの、性的発達には嬉しさとともに戸惑いや不安など様々な思いや葛藤を感じていた。障がい児・者に関わる人の多くが、性器いじりや周囲の人(家族、教員、友人など)への身体接触を問題行動と認識しており、解決策を望んでいることが明らかとなった。これらのことから、障がい児・者のセクシュアリティ教育において必要と考えられる教育内容が実施されるためには、実施上の課題を解決できるような方策の提案が必要であることが示唆された。
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