研究課題/領域番号 |
19K19687
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
田村 南海子 上智大学, 総合人間科学部, 助手 (60613271)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | がん / 在宅療養 / 家族 / 意思決定 |
研究実績の概要 |
今年度は、がん患者・家族が、診断から終末期に至るまでのどのような段階でどのような認識をすることにより、在宅療養への移行に向けた意思決定を行っているのかそのプロセスを明らかにすることを目的にインタビューを行った。 対象者は緩和ケア主体の在宅療養を経て亡くなったがん患者の家族(主介護者)で、看取り後6か月~3年以内であり、現在2名の調査を終えた。分析は修正版グラウンデッドセオリー法を用いている。 現在までの調査で以下のことが明らかとなった。家族は診断時に患者のがんについて説明を受け、「がんになったことを客観的に理解し冷静に受けとめよう」としていた。この時に進行度を聞き疾患について調べられた家族は予後についての知識を得て「気持ちの面で覚悟し生活を調整する準備」をしていた。その後、治療開始当初から「これまでの生活を大切にしようとする患者の意思を知りその人らしさを重んじる」関わりをしていた。転移や積極的治療の中止の段階で医師から予後を伝えられ、家族は診断当初から知識を得ていた場合「予後を聞き治療を受けないことを決めた患者の意思を静かに見守りながら家族も現実を受けとめ」ていたが、それまで進行度や予後に関する知識がなかった家族は「これまでと大きな変化がない患者とのギャップに鼓動が聞こえるほどの衝撃」を受けていた。しかし、いずれの場合も「残りの時間を見据えて本人のしたいことを大切にしよう」としていた。終末期を自宅で過ごすことに決めた要因は、治療開始当初からの「これまでの生活を大切にしようとする患者の意思を知りその人らしさを重んじる」ことが素地となり、「どうしてもの時は入院できる体制を準備できたことと苦痛がなかったこと」「元気な時から付き合いのあった医療従事者の後押し」があげられた。 これらの結果は対象者の背景による違いも考えられるため、今後は背景の異なる対象者のインタビューを追加し分析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の計画段階では、インタビュー調査の対象者を現在在宅療養をしている患者の家族としていたが、訪問看護ステーションや在宅診療を行う往診医にリクルートを依頼した所、対象者への負荷がかかるという点から協力を受けることが難しかった。そこで、インタビューの内容を改めて精査し、看取り後の遺族でも十分にデータを得ることができると判断し、対象者の変更を行った。対象者へのリクルートと変更に時間を要したため、進捗に遅れを来している。
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今後の研究の推進方策 |
研究の第一段階であるインタビュー調査の対象者を、緩和ケア主体の時期に在宅療養をした患者の遺族に変更したため、リクルートを進めインタビュー調査数を増やす予定である。その後、調査結果をもとにがん患者・家族の終末期在宅療養に向けた早期からの看護介入モデルを開発し、その信頼性と妥当性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度中にインタビュー調査を終了する予定だったが、対象者の条件を変更する必要が生じたためインタビュー調査に遅れが生じた。このため、インタビュー調査用に計上していた謝金やテープ起こしの費用のうち未使用分が発生したため。 次年度に追加で行うインタビュー調査の謝金・交通費・テープ起こし費用で使用することを計画している。
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