研究課題/領域番号 |
19K19690
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
崔 ホンソク 拓殖大学, 工学部, 助教 (20823412)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プレパレーション / 全天球動画 / ヴァーチャルリアリティ |
研究実績の概要 |
実写を360度立体視で体験することでプレパレーション効果の高いツールを作るため,二つの研究を行った.一つは,臨場感の最適値を求めるために8Kまで撮影可能なVRカメラを用いて全天球動画を撮影し,そのデータをFull HD(1920x1080)から8K(7680x4320)で検証した.VR HMDで一般的に用いられるFOVは100°前後であるため,全天球に伸ばされた動画データはその一部分しか表示されず,全天球動画をFull HDサイズで表示させると周りの環境は認識できるものの目に映る画像が荒く,VR最大の特徴である臨場感が下がる結果となった.全天球動画のサイズが大きいほど目に映る画像は鮮明になり,臨場感が増すことは明らかであるが,この研究で目指している看護現場で普及するために必要な価格とスペックからVRデバイスでの最適な動画のサイズを検討したところ,60fpsを維持できる最大動画サイズは,4096x2304であることが分かった.したがって,これを今後の研究で使用する全天球動画のサイズにすることとした. もう一つは,VR酔いを軽減させる研究を行った.VR HMDを利用して全天球動画を閲覧した多くの被験者は「移動が始まる・止まる・方向が変わる」時,すなわち加速度のある時にVR酔いを感じた.そこで,これからどのように動くのかを前もって表示するダミー人形と現在の姿勢を知らせてくれる姿勢表示機を用いてSSQ (Simulation Sickness Questionnaire)評価を行った.その結果,ダミー人形が約18%減と姿勢表示機が20%減となった.しかしこの結果は「VR酔いがなく快適に感じる」とは距離がある数値であった.そのため今後の研究では,FOVを半分ほど絞って視野を狭くする,動画の移動をすべてテレポート式に変える等の方法を検討し,プレパレーションに最適な方法を探る予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,現在まではおおむね順調に進んでいる. 当初計画していた3年間の研究フローの1年目に実施予定であった機材テスト・映像処理検証は実施できた.プレパレーション効果の高いツールを作るための要素を明らかにするためコンテンツ制作については,研究協力先の愛知県立大学において,先ず,コンテンツにつて複数の小児看護学教員とブレーンストーミングを実施した.次に,3DVRプレゼンテーションにした時のコンテンツの在り方を検討するために臨床教育のための実習室においてシミュレーションを行い,撮影テストを終えた. しかし,今後,研究はやや遅れることが予測される.その理由としては,新型コロナウィルス感染が拡大する影響で,研究協力者と今年度予定していた体験了解保護者と患児を対象とした実験検証の予定が立てられないからである. そこで検証実験ができない間は,非対面で可能なVRコンテンツ制作等を進める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染拡大の影響で,対面で行う検証実験はできないため,事態が収束するまではプロトタイプの開発に集中する予定である. 今後の研究は、大きく分けてプレパレーションツールのインタフェースを含む機能面の検証とストレスコーピングの要素を組み込んだVRコンテンツのプロトタイプの開発を進める. 前者は,今までの全天球動画に関する研究結果をもとに3DVRプレパレーションツール中でのVR酔いを軽減させるための移動処理をVR HMD,スマートフォン,タブレット別に分けて構想していく. 後者は,ベッド周りを飾り付けるVRコンテンツの検討とVR HMDを装着できない,または自分の手でデバイスを固定できない患者のためのストレスコーピングツールの機能を兼ねた非接触式VRインタフェースの制作である. その他には,市販のVR HMDは頭部に固定するためのゴム製のバンドが全天球動画を閲覧させる際に,患児は自由意志で取り外しが難しい,外す際にメガネが落ちそうになる,ヘアスタイルが崩れる,圧迫感を感じる等の声に対応するために,このバンドを無くし,VR HMDに装着することで,より自由に取り外しができるグリップも制作する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,旅費と消耗品を他の研究費から賄うことができたからである.この金額は今年度物品費(VR HMD等)の購入に当てる予定である.
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