本研究の目的は,認知症高齢者に対するポケットエコーを用いた便秘ケアアルゴリズムを開発することである. 便秘ケアアルゴリズムの開発に向け,2022年度は,認知症高齢者の便秘に対して看護師がどのようにアセスメントして援助方法を決定しているのか明らかにした.看護師11名を対象に半構造化面接を行った結果,【いつもと違う様子から便秘の仮説を立てる】【食事量の減少・嘔吐から便秘の仮説を立てる】【数日出ていないまたは少量のとき便秘の仮説を立てる】【本当に出ているか複数の指標から判断する】【便秘の原因を考える】【症状出現の原因を考え便秘以外を消去する】【援助方法を決めるために‘排泄歴’を把握する】【援助方法を決めるために直腸指診を行うまたは画像診断の結果を確認する】【援助方法を決めるために食事摂取量から便の溜まり具合を想定する】【便の降り具合から浣腸・摘便・下剤を選択する】【自然排便の援助をする】【飲食を工夫し腸蠕動を促す援助をする】【便意のサインや排便があったか確認する】【いつもと違う様子からすぐに便を出し予想通りだったと確認する】の14カテゴリが生成された.生成された14のカテゴリを解釈すると,認知症高齢者の便秘に対するアセスメントと援助方法は,≪便秘かもしれない≫から始まり≪便秘の確証を探る≫ことにより [便秘の確信]を持ち,≪援助方法の決定≫,≪排便の確認≫に至るという要素から成る構造が存在すると言える.このアセスメントと援助方法をあらわす構造と,これまでに収集した直腸のエコー画像を分析した結果を併せ,ポケットエコーを用いた便秘ケアアルゴリズム案を作成した.アルゴリズムの内容妥当性の確保に向け,認知症患者への看護や排泄ケアに精通する看護職、エコー画像に精通する臨床検査技師にスーパーバイズを受けた.
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