研究課題/領域番号 |
19K19714
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研究機関 | 共立女子大学 |
研究代表者 |
若濱 奈々子 共立女子大学, 看護学部, 助教 (20822761)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高齢者 / 熱傷 / 予防 |
研究実績の概要 |
1.文献レビューの実施 文献から高齢者が熱傷を受傷した場面の抽出と分析を行い、日常生活の中での熱傷原因を明らかにしたうえで、高齢者の活動レベルや生活範囲を考慮した予防策の検討を行った。得られた14件の論文を対象に、熱傷原因をICFの「活動と参加」の大中分類に沿って分析した。その結果、高齢者の熱傷の原因として、やかんやポットを持ち運ぶ最中に転倒するなどの【運動・移動】に伴う熱傷、全盲や認知症高齢者による食品乾燥剤の誤食や高温の風呂などの【セルフケア】に伴う熱傷、調理や庭でのごみ焼きなどの【家庭生活】の中での熱傷、化学製剤や炎を取り扱う仕事などの【主要な生活領域】での熱傷、仏壇からの引火等の宗教的行為を含む【コミュニティライフ・社会生活・市民生活】の中での熱傷の5つに分類された。高齢者は自立度が高く、仕事を原因とする熱傷もあり、幅広い活動と参加の中で起きていることが明らかとなった。今後、調査用紙を作成するにあたり、自立度に応じた危険予測や高齢者の生活の継続性が途絶えないような予防策を考慮した質問内容を検討していく必要がある。
2.学会での受賞講演 日本老年看護学会においてこれまでの実績が認められ、論文優秀賞の受賞へつながった。日本老年看護学会第24回学術集会(2019年6月,至仙台)にて、受賞論文である「前期高齢者と後期高齢者における熱傷の特徴と『熱傷の重症度』への影響要因」の受賞講演を行った。高齢者の熱傷の特徴と「熱傷の重症度」への影響要因を前期高齢者と後期高齢者の比較から明らかにし、特に後期高齢者は熱傷を受傷すると重症化しやすいため、火炎での熱傷を防ぐ必要性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度から2020年度までの研究計画は以下の課題であった。 1)「高齢者の熱傷に関しての文献レビュー」については、高齢者の日常生活の中の熱傷原因について把握することができた。 2)「協力施設および団体のリクルート」については現在行っている最中であるが、COVID-19の影響もあり、対象者が高齢者である協力施設は現在、外部からの受け入れがされていない状況であるため、今後のCOVID-19状況を鑑みながら協力施設をリクルートしていく必要がある。 3)調査用紙の作成と所属施設の研究倫理審査は、今年度行っていく予定である。
以上のことから、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度以降は以下の研究を進めていく方針である. 2020年度は、①研究協力施設および団体のリクルートを行う予定であるが、COVID-19の影響もあり、研究協力施設と対象者の安全に配慮した時期を検討していく必要があるため、リクルートを翌年度に繰越す可能性もあり得る。②2019年度の文献レビューによって、高齢者の熱傷は幅広い活動と参加の中で起きていることが明らかとなった。より汎用性の高い調査用紙を作成するために、これまでの受賞論文や文献レビューを反映するとともに、専門家の協力を得て調査項目の妥当性を高めていく予定である。③また、所属施設での研究倫理審査を受ける予定である。
2021年度~2022年度は、①高齢者の熱傷の受傷原因とその関連要因について、質問紙調査を行い、解析をする予定である。対象者は100名程度を予定していたが、統計解析を行うために200名から300名程度へ増やすこととする。なお、調査はイベントなどでの集合調査を検討している。②日常生活行為別に分類した熱傷の受傷原因の調査結果から、予防パンフレットとチェックリストの作成を行う予定である。その際、構成や内容の妥当性を高めるために、再度、専門家の協力を得る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度計画していた協力施設へのリクルートのための打ち合わせは2020年の1月頃より計画していたが、対象者は高齢者が多く、COVID-19への感染リスクが高いため、協力施設との打ち合わせは見合わせていた。また、対象者数を100名程度から200~300名程度へ増やしたためそれに伴う費用や、COVID-19に対する感染予防策を講じながら協力施設へのリクルートを行うための費用を繰越すこととした。
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