1.地域在住高齢者の熱傷の予防行動の特徴 地域在住高齢者における熱傷の予防行動の特徴を明らかにするために、A市内およびその近郊のシニア大学を受講している高齢者316名のうち、65歳以降に受診を必要とした熱傷受傷がなく、熱傷の予防行動への回答があった104名を対象とした。調査期間は2023年9月から12月とし、質問紙調査を実施した。日ごろから意識している熱傷の予防行動に関する自由記述から熱傷の予防を意識している「熱源」と「行動」を抽出して質的記述的に分類した。結果として、対象者の属性は、性別は男性30.8%、女性69.2%で、年齢の中央値(IQR)は76(6.25)歳であった。熱傷の予防を意識している熱源は,ガスコンロの火などの「火炎」が37.0%と最多で、熱湯などの「高温液体」が24.7%、高温の調理器具などの「高温固体」が20.5%、カイロなどの「低温熱源」が8.2%であり、高齢者の熱傷予防の意識の特徴として、熱源は台所での調理に関するものが多いことが明らかとなった。高齢者の熱傷の予防行動としては、≪動線の確保≫≪調理器具の変更≫≪炎に触れない注意≫≪温度への意識≫≪意識的な心のゆとり≫≪防寒具の適切な使用≫に8つに分類された。このことから、多くの高齢者に熱傷への予防意識があり、個別の熱傷を受傷しない注意を払っていたり、工夫をしていることが明らかとなった。熱傷は自宅内で起こりやすい事故であり、予防意識を他者と共有する機会は少ない。また予防行動としての環境調整には家屋の構造や経済的な問題による限界もあることから高齢者自身の力で環境調整することは限界もあるため、情報の周知・共有や、社会資源を活用できるようなサポートが熱傷予防の啓発につながると示唆された。
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