研究課題/領域番号 |
19K19735
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
飯藤 大和 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (60723921)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 視線解析 / 音声解析 / 大学生 / コミュニケーション / プロトコール / 看護師 |
研究実績の概要 |
2019年度の目標は「視線解析と音声解析のテストと専門家会議を行う」、および「若年者(大学生)のコミュニケーションの特徴を明らかにする実験を開始する」ことであった。 視線解析について、研究協力者である徳島大学および東海大学機械工学科の専門家と会議を行った。視線解析装置にはTobii eye tracker 4Cを用いた。視線の座標特定には、東海大学の研究者らが開発したプログラムを用いた。このプログラムでは視線を検出したデータを(X, Y)の座標データとしてExcel出力し、そのデータを顔及び上半身の16区域に分けて,どの部位に視線が置かれていたか分析することができる。それをもとに実験後は散布図を作成することでより詳しい分析ができると考えた。 音声解析は解析ソフトWavePad FFTを用いて研究者の音声を試験的に収集した。音圧(デシベル数)の変化を測定できることを確認した。 その後、臨床研究倫理委員会の承認を得て看護系大学生を看護師役として視線と音声データの収集を行った。コミュニケーション時の状況が事後分析できるように場面をデジタルビデオ録画した。得られた実験結果のうち1例では、約5分間のコミュニケーションにおいて解析範囲内に視線が置かれた有効なデータは24222個であった。視線が置かれていた回数が多かったのは患者役の顔右下(36.51%)、次いで顔右上(33.93%)、顔左下(13.01%)、顔左上(8.31%)であった。音声解析では、コミュニケーション開始時は主に-18~-12dB付近で会話していたが、2人が共に笑ったシーンから-6dBラインを頻回に超え、発話数が増えた。その共感を示したとみられる場面のみの視線解析では、顔周囲に94%の視線が集まっていた。得られた成果は日本看護科学学会で口頭発表を行った。また、視線・音声解析のプロトコールを作成し論文投稿の準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は「最先端技術による看護ロボット開発に向けた看護師―高齢者/認知症患者の相互作用分析」である。そのための基礎的な実験として、今年度は卓越した看護師から収集するデータの比較対照群として看護系大学生のコミュニケーション時の特徴を分析することを目標とした。2020年度前期までの間で目標被験者数は50名としている。現在は2名のデータ収集が済んでいる。 1例のデータ収集に多くの準備(部屋の確保、被験者の確保、実験機器のセッティング等)が必要であるため、データ収集に時間がかかっているため症例数が少ない。 また、人を対象とした実験研究である本課題は、慎重な倫理的配慮が必要である。大学生を被験者として解析機器を用いてデータ収集するため、2019年度は倫理委員会への説明と承認に時間を費やした。 さらにCOVID-19感染症の拡大を受け、研究協力者を募れない状況が続いていることも症例数の少なさに影響している。 実験のプロトコールが完成しているため、今後は対象となる被験者さえ集まれば順調に症例数を増やすことができると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度後半にかけて、継続して卓越した看護師のデータの比較対照群として看護系大学生のコミュニケーション時の特徴をデータ収集し、分析する。その後、「優れたコミュニケーション技術を有する看護師のコミュニケーションの特徴と高齢者および認知症患者の反応」について我々が作成したプロトコールをもとにデータ収集する。四国内の関連病院の協力のもとに行い、目標被験者数は、看護師50名、高齢者50名、認知症高齢者50名である。 研究成果は看護系の学会発表及び学術誌に投稿し、広く研究成果を公表する予定である。 最終的には2022年度中に「高齢者および認知症患者の人型対話ロボットとのコミュニケーションの特徴」が明らかにできるように段階的に研究活動に取り組むこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた視線解析装置は非常に高額であり、ライセンス料が生じるため今年度は市販されている機器を購入し、研究協力者らが作成したプログラムを使用した。そのため、物品費が次年度繰越額として計上されている。 また、謝金や旅費等について次年度使用額が生じた件については、臨床研究倫理審査委員会の承認手続きに時間がかかり研究開始が遅延したこと、COVID-19感染症拡大により研究協力者を募ることができなかったこと、多くの学会参加が中止になったことが影響している。 繰越金については、次年度、積極的に研究協力者を募り複数のデータを収集する。また、使用している機器の精度を勘案しながら必要であれば当初計画していた機器への変更も考慮する。また、成果は積極的に国際学会等で公表するため、謝金、物品費、旅費に使用する予定である。
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