研究期間を通して、146名の被験者からデータを収集することが出来た。精神的ストレスの指標をDHS:Daily Hassles ScaleおよびWHOに準拠して作成されたGHQ12:The General Health Questionnaireとし、酸化ストレスとの関連を分析した。酸化ストレスは、d-ROMsテストを用いて評価した。分析に当たっては、日常生活習慣、服薬状況、疾病の有無、BMI、アテネ式不眠尺度、CES-D等を共変量とした重回帰分析を実施した。 分析対象者146名の内訳は、男性25名、女性121名、平均年齢が31.9歳であった。 重回帰分析の結果、d-ROMsテストの値は329.6±69.5(CARR U)であった。ROMs値は、性別、DHS得点、GHQ12得点、BMI、ホルモン剤の使用、CES-Dと正の関連がみられた(p<0.05)。運動習慣、アテネ式不眠尺度は有意差がみられなかった。酸化ストレスに影響を及ぼすことが報告されているホルモン剤の使用、年齢、BMI、抑うつの程度(CES-D)などの影響要因を補正しても、DHSはROMs値に有意に影響を及ぼしていた(p<0.05)。 d-ROMsテストは、生体内の活性酸素やフリーラジカルを直接計測せず、活性酸素等によって生じた血中のヒドロペルオキシド(ROOH)濃度を計測する。d-ROMsによる評価は、生体内の酸化ストレス度の状態を総合的に示すことから、日常的な些細な精神的ストレスが酸化ストレス産生に影響を及ぼしていることが推察される。 また、精神的ストレスの蓄積によって,リンパ球,マクロファージ,顆粒球,NK細胞などの免疫系細胞の活性にも影響を及ぼす可能性がある。
|