研究課題/領域番号 |
19K19746
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山本 なつ紀 慶應義塾大学, 健康マネジメント研究科(藤沢), 特任助教 (80835851)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 在宅看護 / 医療安全/患者安全 / インシデント報告システム |
研究実績の概要 |
本年度は、インシデント事例を訪問看護ステーション(以下、訪看ST)間で共有できる報告システム(以下、システム)の開発に向け、訪看STでの開発中のシステムの試用ならびに試用後のインタビューを行うとともに、訪看STのインシデント報告体制の現状に関するヒアリングを実施した。関東地方ならびに九州地方に所在する訪看ST3か所(対象者:管理者3名を含む13名)にて、開発したシステムの試用を約2週間行い、その後、①現行の訪看STでのインシデント報告体制について、②使用したシステムの利用のしやすさ、③報告項目の過不足、④訪看ST間で情報共有する際に重要と考えるインシデント情報などについて、インタビューを行った。 訪看STのインシデント報告体制は、3か所とも紙媒体への記入であり、年間のインシデント事例の集計や報告事例へのフィードバックが無いとする施設も1か所あった。また、3か所とも、他の訪看STとのインシデント情報共有の経験は無かった。 アクセスのしやすさや報告項目について、タブレットやスマホなどからもアクセス可能であるため、訪問後に訪看STへ戻らずとも報告できるや、既に報告項目が設定されているため報告内容の漏れが発生しにくい、選択式の報告項目が多いため報告が簡便にできる、などの意見があった。一方で、発生したインシデントの詳細を把握するためには、インシデント事例の概要部分(記述式)の質が一定程度担保されてる必要があり、記述部分など報告内容の質の担保を求める意見も挙げられた。 報告項目として重要視する項目としては、インシデント事例の概要、発生要因、再発予防策の3つを挙げる対象者が多く、今後訪看ST間でインシデント事例を共有する際に、各訪看STに最低限公開することを求めるべき重要な項目であると考えられた。 本年度の調査より、開発中のシステムの課題や、質問紙調査で尋ねるべき項目などが具体化された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、インシデント事例を訪問看護ステーション(以下、訪看ST)間で共有できる報告システム(以下、システム)の開発に向け、訪看STでの開発中のシステムの試用ならびに試用後のインタビューを行うとともに、訪看STのインシデント報告体制の現状に関するヒアリングを実施した。 本来は、本年度中に全国の訪看STへ、訪看STのインシデント報告体制の現状に関する質問紙調査まで行う予定であったが、システム試用ならびにインタビューに際するフィールド等の結果、本年度は訪看STの報告体制のヒアリングならびに質問項目の作成までとなった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、全国の訪問看護ステーション(以下、訪看ST)から無作為抽出した3,000か所へ、訪看ST内のインシデント報告体制、訪看ST間でのインシデント情報の共有状況などに関する質問紙調査を行うとともに、2021年度のインシデント報告システムの施設間での運用に向けたリクルートを行う予定である。 ただし、本研究の調査対象である訪看STは、在宅医療を担い、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けている機関の一つである。そのため、調査実施に際しては、新型コロナウイルスの収束状況などを踏まえた上で、調査対象の負担とならない時期・方法を最大限考慮する必要があると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
全国から無作為抽出した訪看ST3,000か所への質問紙調査について、本年度は質問項目の検討のためのヒアリング、質問項目の作成までが実施された。 来年度、質問紙の作成・印刷・配布、返送データの入力等に予算を執行予定であるとともに、インシデント報告システム開発に際して、契約しているシステム開発会社へ開発費の支払いが発生する予定である。
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