研究実績の概要 |
2022年5月-7月に、訪問看護ステーション(以下、ST)での事故等の安全情報(Patient safety incident: PSI)の取扱いの現状や、心理的安全性の関連要因、コロナ禍でのST内コミュニケーションの変化等を探索することを目的に、全国のSTから無作為抽出した1,300か所の管理者・スタッフを対象に、無記名質問紙調査(Web調査併用)を実施した。なお、管理者とスタッフの回答を施設ごとに突合できるよう、各STに突合IDを割り付けた。 管理者202名、スタッフ170名より回答を得られ(Total=372名)、このうち管理者とスタッフの回答データが突合可能な訪看STは73か所だった(管理者73名、スタッフ145名:Matching total=218名)。 ST内で、発生したPSIに関する事後検討を定期的に開催しているSTは18.3%、不定期に開催しているSTは60.2%、特に開催していないSTは21.5%だった。また、発生したPSIを他のSTと共有することが、自身のSTの安全管理の向上に有効であると回答した者は96.1%、実際に他のSTとPSIを共有したことのある者は同一法人ST間で23.1%、他法人ST間で19.6%だった。そして、ST間で共有したいPSIの情報について、最もニーズが高かった項目は、PSI発生後に検討された再発予防策76.6%、次いでPSIの発生要因75.5%、PSIの類型(転倒や誤薬など)44.8%だった。 ここから、ST内でPSIの情報が十分に活用されていない可能性が示唆され、今後開発するST間でPSIの情報を共有するシステムには、発生したPSIからどのように再発予防策の検討(組織学習の展開)が行われたか、などの組織学習に関する情報や手引き、実践事例などを参照できる機能が実装されることで、より実効性の高いシステムとなり得ると考えられた。
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