変形性膝関節症(膝OA)と糖尿病は互いの疾患のリスクを高める.末期膝OA患者において,症状が軽減しない場合には人工膝関節全置換術 (TKA) 等の手術の適応となる.TKAは,膝痛の改善や身体機能・身体活動量の向上に有効であるといわれているが,糖尿病が併存するTKA患者を対象にTKA前後で糖尿病指標を比較した研究では,膝機能や身体機能,質問紙で評価した身体活動レベルは向上したが糖尿病指標は変化しなかったと報告されている.その理由として,身体活動量増加に焦点を当てた介入をしておらず,糖尿病指標改善が見込まれる強度の活動をしていないことが考えられる. 本研究の目的は糖尿病が併存するTKA後患者に対する効果的な介入を検討するために,TKA後の膝機能・身体機能・QOL・身体活動量・糖尿病指標・姿勢・運動セルフエフィカシーを長期にわたって調査し,糖尿病の改善に関連する項目を検討すること(研究①),申請者が提案する運動介入方法の効果検証を行うこと(研究②)である. 2023年度は,研究②の申請者が提案する運動介入方法(Draw-in歩行)の効果検証を行った.生活習慣病が併存する整形外科疾患患者12名を対象とし,3ヶ月間Draw-in歩行を行った.1日合計20分,毎日実施するよう指導し,歩行実施時間を運動記録表に記載して,運動実施率を算出した.また,介入前と3ヶ月終了した時点でアウトカム指標(健康関連QOL,運動セルフエフィカシー,体重,筋量,腹囲,血液検査データ)を測定した.その結果,運動実施率は94.0%であった.介入3ヶ月後に改善がみられた項目は,健康関連QOL,運動セルフエフィカシー,体幹筋量,腹囲,各コレステロール,血糖値,ヘモグロビンA1cであった.また,歩数・中高強度活動時間が多く,介入前後でこれらが大きく増加すると,HDLコレステロールは増加する傾向であった.
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