本研究の目的は,認知症を有する65歳以上の高齢者(以下,認知症高齢者)の就業継続支援モデルを開発し,認知症高齢者に対する就業継続支援に関して示唆を得ることである.2023年度に実施したことは,主に以下の2つである.
1.インタビュー調査:認知症高齢者に対する就業継続支援に関して示唆を得るために,就業により金銭的報酬を得ている認知症高齢者2名を対象にインタビュー調査を対面で実施し,それらインタビューデータの逐語録を作成した(※2022年度までに5名のインタビュー調査を完了しており,2023年度分を含めると7名となった).
2.インタビュー調査結果の分析:認知症高齢者の就業継続支援モデルを検討するために,KJ法を用いてインタビュー調査結果の分析を行った.まず,逐語記録から認知症高齢者の就業継続にありそうな内容を,適切に単位化・圧縮化して94枚のラベルを得た.次に,それら94枚に対して多段ピックアップ(個々のデータの価値を積極的に生かして最善の結果を得るために,多量のラベルを精選するための方法)を行い,40枚のラベルを精選した.最後に,それら40枚を用いてKJ法を行った結果,【肯定のまなざしの中】【非金銭的価値の味】【社会経済活動の拡がり】【助けられていることの実感】【自律的に取り組む】【意識的な自分磨き】【健康不安と就業の狭間】【人間関係の棘】【社会的役割に喜び】および【培ってきた力を発揮したい】の10グループに統合された.
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