研究実績の概要 |
2016 年4 月14 日と4 月16 日に発生した「熊本地震(M6.5、M7.3)」で、震度7 が観測された。被害状況は、死者273 人(震災関連死を含む)、重軽傷者2,809 人で、住宅被害状況は206,886 棟(全壊8,667 棟、半壊34,79棟、一部破損163,500 棟)であった。本研究では、熊本地震5 年経過した時点で、被災就労者を対象に精神的健康状態の経時的変化について明らかにすることを目的とした。対象者の選定は、震度7 を記録し被災した熊本県上益城郡にある工業団地24 社の代表者に口頭と文書で、研究の協力依頼を実施した。その中から協力に同意をいただいた15 社の被災就業者676 名を対象者とした。調査を4 回(半年後、1 年後、3 年後、5 年後)実施し、8 社111 名(回収率16.4%)を最終分析者とした。有効回答率は96.4%(半年後・3 年後)、93.7%(1 年後・5年後)であった。その結果、熊本地震5年間の就労者の精神的健康状態は、震災3 年後において GHQ28 総得点および下位尺度の身体症状とうつ傾向、AIS 得点、主観的健康感で最も悪化がみられた。また、PTSD 発症者は5 年経過しても1 割の者にみられた。震災3 年後の精神的影響は、住宅再建の見通しが立たないことや、引っ越しなどによる住環境・近隣との関係性の変化による孤立が影響していると考える。震災前から職場でのコミュニティや相談相手の存在が健康被害の悪化を防ぐ可能性があると示唆を得ることができた。
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