研究課題/領域番号 |
19K19780
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
金原 京子 関西医科大学, 看護学部, 講師 (20454738)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 事前意思確認 / 看取り / 介護付き有料老人ホーム / 看護の役割 |
研究実績の概要 |
研究2年目となる2020年度は、2019年度に行った実態調査の分析および、分析の結果をもとに介護付き有料老人ホームの看護師にインタビュー調査準備をすることであった。 実態調査は285施設(回収率:15.8%)から回答があり、280施設(有効回答:15.6%)で分析を行った。回答のあった施設の入居者状況は、80歳以上が86.4%、うち90歳以上が41.1%と高齢化が進んでいたが、要介護4・5の入居者は26.4%にとどまり、特別養護老人ホームに比べると自立度の高い高齢者が多かった。直近半年で逝去された1,280人のうち「居室」での死亡は710人(55.5%)、容態の悪化で病院に搬送されての死亡は544人(42.5%)と、特別養護老人ホームに比べると病院で亡くなるケースが多かった。 急変時や終末期における医療等に関する事前意思確認(ACP)の実施状況は、「必ず実施」や「ある程度実施」を合わせると入居時点、体調悪化時、看取り期ではいずれも8割以上の施設が実施していたが、「日々の関りの中で」意識的に行っているという施設は半数程度にとどまった。また、看取りに向けての職員の姿勢は「かなり積極的」と「やや積極的」を合わせると、施設長で228施設(81.4%)、生活相談員で214施設(76.4%)、介護職で183施設(65.4%)、看護職で217施設(77.5%)、協力医で217(77.5%)であり、特に管理者で意欲的であった。しかし、介護職でやや低く、現場レベルでの戸惑いが見られた。 本調査から、施設として看取りへの取り組み姿勢はあるものの、事前意思確認の実施状況が入居時点と容態が悪化してからの時期のみになりがちである、実際を担う介護職の積極性が低め等、看取りに向けての取り組みは発展途上の段階にあり、実際、最期に病院に搬送されお亡くなりになる入居者がまだまだ多いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実態調査の分析から、介護付き有料老人ホームにおける看取りの実情は、概ね研究者が想定していた状況であった(入居者層は高齢化が進んでいるが、特別養護老人ホームに比べると自立度が高い。特別養護老人ホームに比べ病院に搬送され最期を迎える入居者が多い、事前意思確認の実施は容態悪化時や看取り期に限定され、日々の関りの中で事前意思確認が行われている割合は低い等)。実態調査の結果について学会発表や論文投稿を行う予定であったが実現できていないため、2021年度には実施していく。 また、介護付き有料老人ホームへのインタビュー調査の準備に関しては、Covid-19の影響から介護付き有料老人ホームとコンタクトをとること自体が困難になっており、インタビュアーのリクルート等、準備は進んでいない。今後、Covid-19の感染状況に合わせ、対面での実施が困難な場合は遠隔でのインタビューを検討する等、実施に向けて方法を検討していく。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は実態調査の結果をもとに、介護付き有料老人ホームに勤務するスタッフに半構成的なインタビューを行い、具体的な事例を収集する予定である。当初は看護師にのみインタビュー調査を行う予定であったが、看護職だけでなく、施設管理者や介護職など対象者を広げてインタビューを進める。 実態調査の結果、事前意思確認に施設長が立ち会うことが多かったり、施設長が施設内での看取りに一番積極的であることや、介護職の看取りに向けての取り組み姿勢が他の職種よりも低く、不安を抱いている可能性が高いことが示唆されており、施設全体で施設内での看取りや事前意思確認の推進に取り組むためには、看護職と多職種の連携、協働は不可欠である。多職種が看護職に期待する役割等も踏まえながら、介護付き有料老人ホームにおける看取り支援のあり方(事前意思確認)や、そこでの看護の役割を明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はCovid-19の影響により介護付き有料老人ホームへのインタビュー調査対象者のリクルートを精力的に進めることができず、次年度への繰り越しが発生した。 2021年度はCovid-19の状況を見ながらではあるが、全国有料老人ホーム協会の協力を得ての対象リクルートや、インタビューに実施についても対面での実施が困難な場合、遠隔での実施を検討する等、実施に向けて様々な方法を模索し、インタビューの実施に向けて取り組む。
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