研究課題/領域番号 |
19K19782
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
戸田 淳氏 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 助教 (00804618)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フレイル / 高齢者 / 認知症予防 |
研究実績の概要 |
認知症予防において唯一エビデンスが示されているのが運動であるが、フレイル高齢者など身体機能が低下している者への運動の実施には限界がある。そこで本研究では、軽運動と認知課題を組み合わせた二重課題による新たな認知症予防プログラムを開発することを目的とした。まずは健常者、軽度認知障害(MCI)、初期アルツハイマー病(AD)に対し遂行機能の評価法であるTrail Making Test-Japan;TMTを実施し各群の検査成績の違いを比較した。対象は、健常高齢者12名(平均年齢は82.3、SD=5.1)、MCI患者12名(平均年齢83.6、SD=6.0)、AD患者13名(平均年齢82.8、SD=6.1)であった。その結果、MMSEとTMTは相関関係にあり、認知機能が低下するにつれ、二重課題を含む遂行機能が低下することが明らかとなった。その一方で、健常群においてはMMSEが保たれていても、TMT成績が低下している群が存在した。この結果から、知的機能が保たれている高齢者の中には、二重課題を含む遂行機能が低下している者が存在することが示唆された。 次に軽運動と認知課題実施時の脳活動を脳活動量計測装置(fNIRS)を用いて調べた。2020年2月までに計6名(男性2名、女性4名)の対象で実施した。課題は、軽運動としてハンドサイクル、認知課題として呈示された単語を逆に読む逆呼称課題を作成し「逆呼称課題のみ」と「逆呼称課題と軽運動」を同時に実施した時の脳活動の違いを比較した。その結果、「逆呼称課題のみ」よりも「逆呼称課題と軽運動」を同時に実施した時の方が脳機能のリソースを多く要していた。また逆呼称の正答率は、親密度やモーラ数の影響を受けることが確認された。今後さらに健常者データの収集を継続するとともに、認知症予防施設の利用者の課題時の脳活動の分析を進め、研究成果をまとめていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、フレイル高齢者が行える認知症予防プログラムを作成し、まず健常者の脳機能に与える影響を検証することであった。現在は、健常者6名(2020年2月時点)を対象に脳血流量計測装置(fNIRS)を用いてその効果検証を行っている段階である。認知課題と軽運動の二重課題の方が脳活動のリソースを多く使用していることが示唆された。よって本研究は現時点でおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は介護保険施設等のフレイル高齢者を対象に、認知や身体状況に合わせた認知症予防プログラムの選択、実践していく段階であり、観察記録とfNIRSのデータを照合させ効果・検証を行っていく予定である。また様々な認知症予防プログラムの妥当性についても検証し、個々に合った効果的な認知症予防の方法を提案したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していたデータ収集および学会が中止となり、旅費の残金が生じた。令和2年度以降は、地域の介護保健施設においてfNIRSを用いて高齢者の脳血流データの取集を行うため、旅費、データ解析用のソフト、神経心理検査などの消耗品を購入予定である。
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