本研究では、フレイルなどを有する高齢者が行える新たな認知症予防法として、安全に行える認知チェア・エクササイズを開発することであった。本研究では、まず地域高齢者の認知的な特徴ついて調査し、認知症予防に関連する認知機能を検証した。身体的フレイル群と非フレイル群を対象にしたフィールド調査において、身体的フレイル群は、Timed up and go test(以下TUG)、Trail Making Test(以下TMT)で有意な低下を認め、TUGとTMT-Bとの間で有意な相関を認めた。 また通所デイサービス利用高齢者の転倒歴の有無と認知機能との関連では、転倒あり群では、TMT-B、左右の片脚立位時間、TUGで有意な低下を認めた。これらの結果から、身体的フレイルや転倒歴のある高齢者では、認知機能の中でも遂行機能が低下しやすく、応用的な身体活動動作に影響を与えている可能性が示唆された。これらの結果を参考に、呼称・逆呼称課題と座位にて行える低負荷の上肢運動を組み合わせた前頭葉賦活課題を作製し、課題実施時の脳活動を近赤外分光分析法(fNIRS : functional Near-Infrared Spectroscopy)を用いて測定した。その結果、呼称、逆呼称のみのSingle条件では、両側の背外側前頭前野が有意に賦活したのに対し、低負荷運動を組み合わせたDual 条件では、運動に認知的リソースが割かれるため有意な脳賦活領域は認められなかった。よってDual条件の方がより少ない認知的資源によって課題遂行を行っている可能性が示唆された。これらの結果は、運動負荷を掛けられないフレイル高齢者の新たな認知症予防プログラムの開発に寄与するものと考えられた。
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