研究課題/領域番号 |
19K19784
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
須藤 恭子 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 国立看護大学校, 客員研究員 (80458976)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | コミュニティナース / ヘルスプロモーション / ヘルスボランティア育成 / 患者家族教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、タイ高齢者保健政策におけるCommunity Nurse(CN)の役割を明確にし、CNの活動と地域高齢者の健康との関連を明らかにすることである。2019年度は、CNの役割がタイ高齢者保健政策の実践促進にどう関連するかについて、先行研究で得られた因子からその関連や構造を検討した。タイ高齢者保健政策実践を促進する27因子は、Policy Implementation Assessment Toolのテーマに基づいて分類された。 CNはタイ高齢者保健政策の実践を担う保健省管轄の県病院、郡病院、郡の下位行政区分であるタムボンのHealth Promoting Hospital(HPH)において医療提供とヘルスプロモーションの二つの役割を担っている。在宅医療を実践する県病院では医師を含めた在宅医療チームが、診察や投薬だけでなく酸素療法や褥瘡ケア等より高度な医療をコミュニティで実践しており、CNは患者への医療提供と患者だけでなく家族等ケアギバーに指導や教育を行っていた。郡病院では高齢者外来や生活習慣病外来など専門外来で高齢者に医療を提供し、CNはコミュニティでの日常生活における治療継続の支援や経過観察を行った。タムボンでのCNの役割はよりヘルスプロモーションに重点がおかれ、コミュニティ高齢者の健康管理を行いながら健康維持のための他省庁が実践するプログラムへの参加促進を実践していた。特にHPHには、医療専門職ではないが同じコミュニティ内に暮らし高齢者の生活を支えるヘルスボランティアが配置されており、CNはヘルスボランティアに対するトレーニング提供等の役割も担っていた。 CNの役割は病院機能により異なるが、高齢者への医療提供とヘルスプロモーション促進を実践しており、患者および家族等ケアギバーの教育やヘルスボランティアの育成により高齢者のコミュニティでの暮らしを支えていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は、県病院、郡病院、Health Promoting Hospitalにおいて実践される高齢者保健医療サービスに関する質問票の作成を予定していた。Community Nurse(CN)の役割を明確化することはできたが、質問票の作成には至らなかった。理由のひとつは、2019年末からの新型コロナウイルス感染症による影響で業務体制が変化し予測しなかった業務が必要となったことで、それ以降研究を計画通りに進めることが難しく進捗に影響を及ぼしたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2019年度に予定していた質問票を作成しプレテストおよび本調査まで終了し、2021年度は分析及び結果の公表を計画する。 研究を遂行する上での課題には、新型コロナウイルス感染症による渡航制限等により会議をオンラインで実施する等の工夫の必要性がある。また、質問票調査は従来型の紙媒体での配布及び回収とオンライン上のプラットフォームを利用した実施の両者を検討していたが、今の状況ではオンラインでの実施および回収がより現実的である。そのため質問票作成と同時にプラットフォーム開発を進めていく方針である。 すでにアクセプトされていた国際学会も中止となっており、学会等での結果の公表機会が制限されることも今後の課題であり、学会誌等への積極的な投稿も検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度、当初予定していた質問票が作成できず、質問票作成に必要な検討会議および翻訳を実施しなかったため、人件費・謝金の使用がなかった。また、年度末からの渡航制限もあり会議は実施できていないため、旅費も使用しなかった。2020年度内に質問票を作成し調査実施予定であり、未使用額を使用する計画である。
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