研究課題/領域番号 |
19K19785
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
佐藤 ちひろ 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (70757468)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リハビリテーション / 脳卒中 / 脳卒中モデル / 神経細胞新生 / KCC2 / 運動 |
研究実績の概要 |
運動麻痺を呈する脳卒中モデル動物に対し、各種運動療法を実施しその機能回復効果を評価するとともに、脳神経細胞の新生有無や損傷後のK+-Cl-共輸送体(KCC2)発現を免疫染色法により検証した。今年度は線条体内にコラゲナーゼ注入により作出した脳出血モデルラットを用いて検証を行った。 運動介入は術後4-28日目にトレッドミル運動を実施し、1日当たりの走行距離を調整しながら実施する群(調整運動群:1m-22/min、4time/day)と、一定の速度および時間の走行運動を実施する群(一定運動群:10m/min、4time/day)および訓練を行わない非介入群の3群を設けた。調整運動群の1日当たりの走行距離は、申請者が過去に実施した回転かごによる自発走行運動(Neuroreport,2020)における走行距離を参考に決定した。 運動機能評価にはMotor deficit score(MDS)およびBeam Walking testを用いた。神経細胞新生の有無評価にはBromodeoxyuridine(BrdU)-NeuNの蛍光二重染色、KCC2発現の評価は免疫染色により評価した。 調整運動群と一定運動群との機能回復効果の比較を行った結果、一定運動群の方が機能回復効果が高かった。脳神経細胞の新生状態については、運動介入を行った群では非介入群に比べ側脳室周辺におけるBrdU-NeuN陽性細胞数が多い傾向にあり、新生した神経細胞が多く観察された。KCC2発現の評価では、発症後24時間および発症後28日目時点での発現状態を免疫染色にて観察し、現在は発症からの経過日数別に発現量の解析を進めている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は、作出したモデル動物における脳神経細胞新生と脳可塑性との関連を検証するため、以下の実験を計画した。 1.作出したモデル動物の機能回復レベルを評価するために、各種運動機能評価(MDS)およびBeam Walking test)を実施し、定量的に評価を行う。2.脳可塑性における神経細胞新生やネットワーク再編の状態評価を行うために、運動介入終了後に採取した脳の前額断切片を作成し、BrdU-NeuN二重染色やスパイン解析を実施する。 上記内容は概ね達成しており、現在は脳神経細胞新生の状態を精査するべく染色条件を検討中している。更に、令和3年度に計画している脳可塑性-KCC2発現の関連究明についても着手しつつあり、評価時期や染色条件決定のための事前実験に取り掛かっている段階である。このため研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、トレッドミルによる一定負荷量の運動介入が脳神経細胞新生を促すことが観察され、脳可塑性において脳神経細胞新生が関与する可能性が示唆された。しかし、今年度使用したNeuNは成熟神経細胞マーカーであるため、発現したばかりの未熟なニューロンは検出できていない可能性がある。次年度は、NeuNだけでなくDoublecortinやNeuroD1とBrdUとの二重染色を併せて実施することにより、介入群間における差を検出することを目指す。 また、上記の形態学的観察は術後28日目の介入終了後に実施しているが、最も大きく変動が起こる時期を同定し観察を行う必要がある。次年度に検証予定のKCC2発現の評価では、発症後の時期別の観察を行い、運動麻痺改善時に生じるKCC2の変動を通したGABA作用の反転が運動麻痺回復に与える影響を検証していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響により、成果発表を予定していた学術大会がオンライン開催あるいは中止となったため、計上していた旅費が不要となったため。 次年度には実験消耗品(染色用試薬等)や動物の購入・飼育が必要となるため、繰り越した費用は消耗品代として必要となる予定である。
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