研究課題
本研究では、①慢性疼痛患者が疼痛を体験している際に思い描く、ネガティブなイメージ(以下インデックスイメージ)の性質を質的に明らかにし、痛み、感情、思考、行動に対する影響を検討すること、②インデックスイメージを書き直す新しい認知行動療法の技法を作成・実施し効果を検証こと、の2点を目的とする。インデックスイメージが痛みと認知および行動の悪循環を強め、痛みを慢性化させるメカニズムを明らかにすることと、その悪循環を断ち切る技法を開発し効果を見る。初年度である本年度は、本学臨床試験審査で承認された(G30020)手続きに基づき、Philips&Clare(2011)、Philips & Samson(2012)を参考にインデックスイメージの内容や機能を明らかにする半構造化面接のインタビューガイドと、インデックスイメージをイメージ上で書き直すためのマニュアルを作成した。このガイドおよびマニュアルを用い、施行法についてのビデオ教材の作成と、6名の実施担当者(臨床心理士3名、看護師2名、精神保健福祉士1名)へのトレーニングを行った。そのうえで、11例の慢性疼痛患者に対し、半構造化面接とインデックスイメージの書き直しを行った。11例の慢性疼痛患者の概要は、男性5名、平均年齢41.45±10.91歳、罹病期間6.6±4.72年、、疼痛部位は腰が3名、全身および片足がそれぞれ2名、首下全身、片腕、背部、側腹部がそれぞれ1名と多岐にわたるものであった。今後はこのインタビューガイドおよび介入マニュアルを、さらに10名の慢性疼痛患者に実施し、データを収集したうえで分析する計画である。
2: おおむね順調に進展している
現在実施した11例を通して、インタビューガイド、インデックスイメージに対するマニュアルの実行可能性、安全性が確認された。またこれらをもとに、半構造化面接とイメージ書き直し技法を実施する担当者に対する教材が完成し、トレーニングも完了している。
今年度準備の整ったガイド、マニュアル、担当者のもとで、症例数を増やし、インデックスイメージの内容の解析と痛みの慢性化につながる機能についての検討をし、インデックスイメージ書き直し技法の効果検証について結果をまとめる予定である。来年度は10例の慢性疼痛患者への施行見込んでいる。
今年度は主にインタビューのためのガイド、イメージ書き直しのためのマニュアル作り、およびセラピストのトレーニングであったため、謝金、人件費については翌年度の介入のために使用される予定である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Behavioural and Cognitive Psychotherapy
巻: 48(2) ページ: 229-242
https://doi.org/10.1017/S1352465819000493
臨牀と研究
巻: 96(5) ページ: 534-538
Psychotherapy and Psychosomatics.
巻: 88(4) ページ: 244-246
10.1159/000500108