研究課題/領域番号 |
19K19793
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 明良 京都大学, 医学研究科, 助教 (50762134)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 末梢神経 / 再生 / 物理療法 / 理学療法 / 超音波 |
研究実績の概要 |
末梢神経再生を促進させる人工神経導管の改良をするために、三次元バイオプリンターを用いた神経導管の作成を試みた。三次元CADデータを基に、内径2.5mmの筒状の形状をアルギン酸とナノセルロースを含有したバイオインクを用いて造形した。クロスリンク剤には塩化カルシウム水溶液を用いた。組織学的な評価では、壁の厚みの不均一性が確認され、特にプリントベッド側の壁が薄くなってしまう現象が認められた。さらに、細胞生存性を確認するため、ラット大腿骨由来の間葉系間質細胞を15万細胞/ml濃度でバイオインクに混合し、導管をプリント後に培養液中で培養した。培養3時間後、1日後、および7日後の細胞生存率を確認したところ、すべておよそ100%の生存性を確認した。続いて生体組織に近いバイオインクを用いて神経導管を作成するために、ゼラチンメタクリレートを用いた造形を試みた。しかしながら、ゼラチンメタクリレートは温度に鋭敏なため、プリント中にゾル化してしまい、意図した形状を造形できない問題に直面した。そのため、シリコンチューブにゼラチンメタクリレートを注入する方式に変更して、内径2mm、壁厚0.5mmの導管を作成することに成功した。次に細胞生存性を確認するために、300万細胞/ml濃度でゼラチンメタクリレートに混合し、導管を造形後、培養液中で培養した。培養3時間後、1~14日後に細胞生存率を確認したところ、培養3日後までは生存性が減少していき50%程度となるが、その後は回復傾向が認められた。単位面積当たりの生存細胞数は全期間においてほぼ変化しなかったことから、細胞増殖も同時に生じていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
人工神経導管の改良がおおよそ完了したが、実験動物への移植治療検証まで至らなかった。その原因として、新型コロナウイルスの影響で研究が十分に遂行できなくなったことが大きい。以上のことから、本研究課題の進捗状況はやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目的である、①人工神経移植治療と超音波治療の併用による相乗治療効果を検討すること、②その作用メカニズムを解明することを推進する。 前年度に開発した人工神経導管を坐骨神経欠損モデルラットに移植し、超音波治療の併用による相乗治療効果を検証する。対照群としては、自家神経移植術を施す群を設ける。組織学的および分子生物学的に神経再生を評価し、その作用メカニズムの解明を試みる。 新型コロナウイルスの影響で十分な動物実験が施行できない場合は、細胞含有人工神経導管に対する超音波刺激効果を検証するin vitro実験も視野に入れて検討する。人工神経導管移植術の末梢神経再生に及ぼす作用メカニズムの一つとして、移植細胞から算出される神経栄養因子の関与が知られているため、超音波刺激による神経栄養因子の発現変化を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で遂行できない実験が生じたため。翌年度分として請求した助成金と合わせて、今年度中に予定された実験を遂行できるように計画を可能な限り詰めていく。
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