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2020 年度 実施状況報告書

筋性拘縮の発生機序に関わる分子メカニズムの探索と理学療法学的戦略の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K19795
研究機関長崎大学

研究代表者

本田 祐一郎  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 助教 (40736344)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード筋性拘縮 / ミトコンドリア / アポトーシス
研究実績の概要

本年度は主たる研究テーマを「筋性拘縮の発生機序におけるミトコンドリアの恒常性の変化の影響」と「筋性拘縮の発生機序におけるアポトーシス関連分子の動態変化の影響」に設定し,不動化した骨格筋を検索材料として用い,組織学・分子生物学的検索を実施した.実験動物には8週齢のwistar系雄性ラット10匹を用い,両側足関節を最大底屈位にてギプスで7日間不動化する不動群(各5匹)と同週齢まで通常飼育する対照群(各5匹)に振り分け,実験期間終了後は各ラットの両側ヒラメ筋を採取した.そして,右側ヒラメ筋から作製した凍結横断切片をNADH-TR染色に供し,筋線維横断面積と酵素活性を計測した.次いで,単位面積当たりの酵素活性を算出し,筋線維タイプ別にミトコンドリアの恒常性を検討した.また,左側ヒラメ筋の一部はPCRに供し,ミトコンドリアDNA(mtDNA)発現量を検索した.さらに,左側ヒラメ筋の一部はReal time RT-PCRに供し,ミトコンドリアの融合因子であるmitofusin1(mfn1)と分裂因子であるdynamin-related protein1(Drp1)のmRNA発現量を定量化した.結果,不動群におけるタイプI・II線維の単位面積当たりの酵素活性,mtDNA発現量,mfn1 mRNA発現量は対照群より有意に低値を示し,不動群のDrp1 mRNA発現量は対照群より有意に高値を示した.これらの結果から,不動化した骨格筋ではミトコンドリア融合因子の発現低下とミトコンドリア分裂因子の発現亢進が生じ,これらの変化がミトコンドリアの恒常性の破綻に影響を及ぼす可能性が示唆された.加えて,昨年度の成果と併せると,不動化した骨格筋におけるミトコンドリアの恒常性の破綻が筋核のアポトーシスに関与し,これが筋性拘縮の発生メカニズムに関わる分子機構のひとつであると推察された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は【研究実績の概要】で述べた2つの主たる研究テーマを基盤として実験計画を進展してきた.その結果,不動化した骨格筋ではミトコンドリアの恒常性に破綻をきたし,これが筋性拘縮の発生メカニズムの重要事象である筋核のアポトーシスに関与する可能性が示唆された.現在はアポトーシス関連分子の動態変化を検索するために生化学的解析のプロトコルを作製しており,理学療法学的治療介入を施したモデルラットの作製にも取り組んでいる.

今後の研究の推進方策

次年度は「筋性拘縮の発生機序におけるアポトーシス関連分子の動態変化の影響」という研究テーマを継続し,不動化した骨格筋におけるcaspase-8,9ならびにcytochrome-cの発現状況を生化学的手法で検索する.そして,これらの成果と2019・2020年度の成果を統合し,筋性拘縮の発生に関わる分子機構の解明を目指す.さらに,「筋性拘縮に対する理学療法学的戦略の開発」というテーマのもと,骨格筋を不動化する過程で電気刺激による筋収縮運動などの介入を行い,筋性拘縮の発生状況を評価する.そして,2019・2020年度に検索した筋性拘縮の発生機序に関与するパラメータの動態を検索し,理学療法学的戦略の介入効果に関する生物学的機序を検討する.

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症の影響によって参加を予定していた学会が中止あるいはオンライン形式での開催となったため,次年度使用が生じた.次年度使用額は学会参加に関わる旅費などに使用予定である.

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Mechanisms underlying immobilization‐induced muscle pain in rats2020

    • 著者名/発表者名
      Oga S, Goto K, Sakamoto J, Honda Y, Sasaki R, Ishikawa K, Kataoka H, Nakano J, Origuchi T, Okita M
    • 雑誌名

      Muscle & Nerve

      巻: 61 ページ: 662~670

    • DOI

      10.1002/mus.26840

    • 査読あり
  • [学会発表] 不動化したラットヒラメ筋における線維化と筋線維萎縮に対するベルト電極式骨格筋電気刺激法の効果2020

    • 著者名/発表者名
      本田祐一郎,田中なつみ,梶原康宏,坂本淳哉,沖田 実
    • 学会等名
      第52回日本結合組織学会学術大会
  • [学会発表] 不動によって惹起される骨格筋の線維化の発生メカニズムの探索2020

    • 著者名/発表者名
      田中なつみ,本田祐一郎,梶原康宏,片岡英樹,坂本淳哉,沖田 実
    • 学会等名
      第52回日本結合組織学会学術大会
  • [学会発表] 低強度の筋収縮運動がラット末期変形性膝関節症モデルの痛みにおよぼす影響2020

    • 著者名/発表者名
      本川智子,坂本淳哉,宮原祥汰,佐々木遼,本田祐一郎,沖田 実
    • 学会等名
      第13回日本運動器疼痛学会
  • [学会発表] 筋性拘縮に対するベルト電極式骨格筋電気刺激法の効果検証ー日内介入頻度の影響ー2020

    • 著者名/発表者名
      本田祐一郎,田中なつみ,梶原康宏,大賀智史,近藤康隆,片岡英樹,坂本淳哉,沖田 実
    • 学会等名
      第25回日本基礎理学療法学会学術大会
  • [学会発表] 筋性拘縮の発生メカニズムに関わる分子機構の探索2020

    • 著者名/発表者名
      田中なつみ,本田祐一郎,梶原康宏,片岡英樹,坂本淳哉,沖田 実
    • 学会等名
      第25回日本基礎理学療法学会学術大会
  • [学会発表] 超音波画像診断装置を用いた長内転筋の筋輝度および筋硬度と股関節外転可動域との関連性の検討2020

    • 著者名/発表者名
      中川晃一,片岡英樹,村田千晶,山下潤一郎,本田祐一郎,坂本淳哉,沖田 実
    • 学会等名
      第25回日本基礎理学療法学会学術大会
  • [学会発表] 低強度パルス超音波療法がラット膝関節炎の急性期の腫脹や痛みにおよぼす影響2020

    • 著者名/発表者名
      佐々木遼,坂本淳哉,大賀智史,田中なつみ,梶原康宏,本田祐一郎,沖田 実
    • 学会等名
      第25回日本基礎理学療法学会学術大会
  • [図書] 運動器の傷害と機能障害 ―その病態とメカニズム2021

    • 著者名/発表者名
      沖田 実,坂本淳哉
    • 総ページ数
      264
    • 出版者
      三輪書店
    • ISBN
      978-4-89590-720-0
  • [図書] 障害別 運動療法学の基礎と臨床実践2020

    • 著者名/発表者名
      木村 貞治、高橋 哲也、内 昌之
    • 総ページ数
      576
    • 出版者
      金原出版
    • ISBN
      978-4-307-75060-8
  • [備考] 長崎大学運動障害リハビリテーション学研究室

    • URL

      http://www2.am.nagasaki-u.ac.jp/pt/basic_pt/

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公開日: 2021-12-27  

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