研究課題/領域番号 |
19K19797
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
飯田 尚哉 札幌医科大学, 保健医療学部, 研究員 (70593490)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 超音波剪断波エラストグラフィ / 野球選手 / タイトネス / ストレッチング / バイオメカニクス |
研究実績の概要 |
肩関節後方関節包が正常に比して硬い状態すなわちタイトネスは野球選手に特徴的で、投球障害肩との関連が深い。投球障害肩の詳細な病態解明や予防・治療法の開発のためには、関節運動中に後方関節包に加わる力学ストレスを定量化することが不可欠である。 近年、超音波剪断波エラストグラフィによる筋弾性計測により、力学ストレスの一つで ある筋の受動張力を非侵襲的に推定評価できることが認められつつある。しかしながら、 本イメージング技術を用いた弾性計測による関節包の受動張力評価の妥当性は不明であった。そこで本研究では、まず超音波剪断波エラストグラフィを用い、肩関節後方関節包の剪断弾性率と受動張力の関係を検証する。さらに、種々の肩関節運動中の肩関節後方関節包の剪断弾性率を計測・比較することで、効果的なストレッチング肢位を明らかにする。 2019年度は、超音波剪断波エラストグラフィで関節包の受動張力評価が可能かを検証するため、肩関節後方関節包の剪断弾性率と受動張力の関係性を調べた。未固定凍結人体標本10体10肩を対象とし、後方関節包中部および下部それぞれの部位で、上腕骨頭-関節包-関節窩標本を作成した。力学試験装置に標本を固定し、関節包に受動張力を25gずつ最大400gまで加え、同時に剪断弾性率を超音波剪断波エラストグラフィ装置で各荷重時に計測した。受動張力を目的変数、剪断弾性率を説明変数とした直線回帰分析を標本ごとに実施した。その結果、後方関節包中部、下部いずれも、剪断弾性率と受動張力に強い正の相関(回帰式決定係数=中部:0.882、下部:0.901)があることが示された。本研究結果は、超音波剪断波エラストグラフィで関節包の受動張力評価が高い精度で可能であることを示し、関節包への効果的なストレッチング肢位の検証に本手法が利用できることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は二つの実験に分けられ、2019年度は一つ目の実験を完了する計画であった。一つ目の実験では、未固定凍結人体標本を対象とし、超音波剪断波エラストグラフィの関節包における力学ストレス評価の妥当性を検証した。加えて、同じく未固定凍結人体標本を用い、二つ目の実験のパイロット実験を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでの研究結果により、超音波剪断波エラストグラフィで後方関節包の力学ストレスの定量評価が可能であることが示された。今後は野球選手を対象に、様々な運動中の後方関節包の弾性評価を行うことで、効果的なストレッチング肢位を検証する予定である。加えて、ストレッチングの即時効果を検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験方法を再考し計画当初に購入予定であった機器を購入しなかった。また、2019年3月にニューヨークで開催予定であったアメリカ超音波医学会に参加予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催中止となり渡航をキャンセルした。2020年度は主に実験被験者への謝金、学会旅費、英論文校正費に充てることを計画している。
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