本研究は、手指巧緻性(静的・動的)の定量評価を開発することを目的とした研究であり、巧緻性の要因とされ、日常生活動作で必要不可欠な手指力の調整能力を定量的に評価する手法を開発することと、既存の手指巧緻性評価との関連を明らかにする。さらには高齢者や中枢神経障害・整形疾患患者を想定し、表在感覚・深部感覚と手指巧緻性の関連を明らかにする。令和元年(2019年度)では、定量測定機器の開発、令和5年度(2023年度)では健常成人を対象とし、既存の机上手指巧緻性評価との関連を明らかにし、力の調整評価の有用性、信頼性と妥当性を検討する。最終年度には表在感覚・深部感覚と、手指巧緻性の関連を明確にし、手指巧緻性と感覚との関連を解明することとした。対象は健常成人男女26名(24.9±2.0歳)。つまみ力調整課題(静的:つまみ部分のアタッチメントセンサーが不動でスタティックな筋収縮による調整、動的:アタッチメントが可動式)を実施した。併せて関節固有感覚の定量的評価として長さ知覚の測定、表在感覚閾値を計測した。結果長さ知覚、表在感覚閾値と力調整課題の成績の良好/不良の間には有意な相関関係は認めなかった。力調整課題のシステム、計測結果はこれまで類似した健康研究の結果を支持するものであり、その有用性が示された。今後さらに検討を重ねる必要がある。
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