本研究の目的の一つ目である客観的で定量的なめまい平衡リハビリテーションの評価方法の確立については前庭脊髄路興奮性の評価が動的バランス練習前後の即時的な姿勢制御の変化と関係があることを報告した。また、動的バランス練習の適応過程において頭部を安定しさせた対象者ほど前庭脊髄路興奮性が高まることが示され、本研究で用いている前庭脊髄路興奮性の評価の妥当性が確認された。また、この研究の対象では有害事象は起こらず安全性についても確認された。 二つ目の目的であるめまい平衡リハビリテーションのエビデンス構築についてはランダム化比較試験にて一般的な治療と比較して理学療法士がめまい平衡リハビリテーションに介入することで主観的なめまい感の改善度が高まることを報告した。また、介入した群では日常生活上の軽強度身体活動量の有意な増加を認め、リハビリテーション開始初期の軽強度身体活動量の増加と座位行動時間の減少はリハビリテーションの効果に影響があることを示した。片側末梢前庭障害患者の前庭脊髄路興奮性の評価については介入前の横断的なデータではあるが、患側で前庭脊髄路興奮性が低下していることを公表した。今後はリハビリテーション前後での変化を調査していく必要がある。 三つ目の目的である疾患、病態別めまい平衡リハビリテーションの効果の検討については内耳に限局した損傷と比較して後迷路の損傷がある患者ではリハビリテーションの効果が低くなることを示した。新規リハビリテーション方法の開発までは本研究では行えていないが、その土台となる成果を公表することができた。今回の研究成果を用いて今後はより効果の高いリハビリテーションの開発を進めていく必要がある。
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