我々は,これまでに経頭蓋交流電流刺激(tACS)を用いて一次運動野と小脳半球を同時刺激することにより,運動スキルが向上することを明らかにしてきた.本研究課題では,この一次運動野と小脳へのtACSが運動学習にも効果を示すかどうかを検討した.対象は健常成人30名とした.tACSは,導電性ゴム電極(5×5 cm)を右一次運動野領域直上および左小脳半球領域直上に貼付し,1.0 mAの強度にて施行した.介入条件は,70 Hzの周波数で刺激する条件(γtACS条件)と疑似刺激条件とした.運動学習課題には,左示指の視覚追従課題を用いた.60 sの視覚追従課題を1 trialとし,各tACS条件施行中に運動学習として8 trial実施した.また,運動学習前および後に各1 trialずつ,さらに翌日に運動パフォーマンスの保持試験として5 trial実施した(計15 trial).本研究の結果,γtACS条 件において運動パフォーマンスの保持が向上した.さらに,γtACS中の学習効率が高い被験者ほど運動パフォーマンスの保持が向上する関係性が認められた.本 研究により,一次運動野および小脳半球に対するγtACSは,運動パフォーマンスの保持を高める可能性が示唆された.本研究の成果は,第24回日本基礎理学療法 学会学術集会にて発表し,国際誌に掲載された(Miyaguchi S et al. Effects on motor learning of transcranial alternating current stimulation applied over the primary motor cortex and cerebellar hemisphere. Journal of Clinical Neuroscience. Vol.78. 296-300.2020.).
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