2023年度は、研究成果の発表、および論文の掲載を目標とした。本研究におけるランダム化比較対照試験の成果は、理学療法関連の学会において発表し、論文は国際誌に投稿中である。また今年度は、本研究のデータを用いたランダム化比較対照試験の二次解析を実施した。その結果は、2024年9月に開催される理学療法関連の学会で発表予定である。現在は、二次解析の結果を国際誌に投稿するために、論文を執筆中である。 本研究は、人工膝関節全置換術後に生じる大腿四頭筋の筋力低下が、大腿四頭筋の術後回復に悪影響を及ぼすとする仮説と、その大腿四頭筋の筋力低下には術前の血流制限下運動が有効であるとする仮説から立案された。本研究の検討では、術前の血流制限下運動が、術直後に生じる大腿四頭筋の筋力低下を抑制することができなかった。そのため、術直後に生じる大腿四頭筋の筋力低下が、大腿四頭筋の術後回復に悪影響を及ぼすことも明らかとならなかった。そこで、本研究の二次解析として、術直後に生じる大腿四頭筋の筋力低下が、大腿四頭筋の術後回復に影響を及ぼすのかを、重回帰分析を用いて検討した。その結果、術後3か月の大腿四頭筋筋力に関連する因子として、術前の大腿四頭筋筋力と、術後における大腿四頭筋の筋力増加(術後4日から3か月における大腿四頭筋筋力の変化率)とともに、術直後に生じる大腿四頭筋の筋力低下(術前から術後4日における大腿四頭筋筋力の変化率)が挙げられた。本研究の二次解析により、術直後に生じる大腿四頭筋の筋力低下が大腿四頭筋の術後回復に悪影響を及ぼすことが明らかとなった。この結果は、術直後に生じる大腿四頭筋の筋力低下を標的とした術前介入の方法を検討することの重要性を示唆する。
|