研究実績の概要 |
本年度は、日本老年学的評価機構(JAGES)調査の調査票設計および調査の実施を行った。同時に、既存のデータを用いて、高齢者の膝痛と社会経済状況についての関連についても明らかにした。この研究は、我が国の30市町村の65歳以上の要介護認定を受けていない、高齢者26037名を分析の対象とした横断的研究である。過去1年間の膝痛の有訴の有無と社会経済状況(等価所得および過去の最長就労職業)の関連を多変量解析にて分析した。また、媒介分析を用いて、社会経済状況と膝痛の有訴の関連を、うつ症状がどの程度「説明」するのかについても検証した。その結果、最も低い収入を得ている群に属していた高齢者は、最も高い群と比較して、膝痛のリスクが1.22倍高い結果となった。さらに、専門職に就いていた高齢者と比較して、肉体労働職に従事していた高齢者は、1.10倍膝痛のリスクを有していた。また、媒介分析の結果、これらの社会経済状況と膝痛の関連のち、34-45%がうつ症状により説明されることが分かった。本研究は、国際誌「The Clinical Journal of Pain」にて原著論文として掲載されている。 また、国民生活基礎調査の2次利用申請も行い、都道府県単位の失業率と腰痛の関連について検証した。この研究では、国民生活基礎調査2010,13,16年のデータを用いて行った繰り返し横断調査である。18-64歳までの労働者人口に該当し、学生を除外した962,586名を分析の対象とした。国が公表している都道府県単位の完全失業率と個人の腰痛の有訴の有無の関連を多変量解析にて分析した。その結果、失業率と腰痛は有意に関連していた。本研究は、国際誌「International Journal of Environmental Research and Public Health」にて原著論文として報告することができた。
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