研究実績の概要 |
今年度は、2019年度に収集したデータの整理およびデータクリーニングを実施した。このデータを用いた、一時集計も行いデータの全容も把握することができた。 また、既存のデータを用いて疼痛の関連の非常に高い関節炎の社会経済状況についての関連についても強力な因果推論を可能とする統計手法を用いて分析も行い、国際学術誌に掲載することができた。この研究では、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県岩沼市に住む、65歳以上の高齢者2,360人を対象に、震災前(2010年)と震災後(2013年)の追跡調査データを分析し、震災の被害と関節炎の発症について検証した。その結果、震災により経済状況が変わらなかった群1,753人のうち震災後に関節炎が発症したのは60名(3.4%)であったのに対して、経済状況が悪化した群556人では35人(6.3%)であった。同様に、住宅被害が無かった群940人では28人(3.0%)であったのに対して、住宅被害あり(一部・半壊・全壊)群1,356人では65人(4.8%)であった。また、震災後に整形外科への受診を控えることが関節炎発症リスクを増加させる結果となった。震災の健康への影響はうつや認知症などの精神的健康のみならず、身体的健康も悪化しやすいことが明らかにすることができた。震災後の医療サポート体制の確立が関節炎発症抑制に重要な役割を果たすことが考えられた。 また、上記の研究のほか、腰痛発症のメカニズムや腰痛発症の緩和要因も最新の統計手法を用いることで明らかにする分析も行い、研究成果を現在、国際誌に投稿中である。
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