加齢による骨格筋の衰退(サルコペニア)は健康寿命の延伸を阻害することから、社会問題となっている。サルコペニアは、骨格筋の定常時における萎縮と損傷時における再生の遅延によってもたらされる。そしてサルコペニアは様々な栄養と関連することが知られている。さらにこれまでに、ビタミンCの不足が老化を促進させるとともに骨格筋の萎縮をもたらすことが報告されている。これらのことから、ビタミンCと骨格筋の関連性を解明することは、サルコペニア発症機構の解明へとつながると考えられる。今年度は、サルコペニア発症機構の解明として、ビタミンCと筋再生の主役と考えられる筋芽細胞の増殖、分化の関連を考察する必要がある。そこで、マウス筋芽細胞株C2C12細胞を用いて、ビタミンCがこの細胞の増殖、分化にどのような影響を与えるかを検討した。その結果、ビタミンC処理によってC2C12細胞の分化誘導後の増殖が促進され、さらにその後の筋分化が促進された。また、これまでにビタミンCがDNAの修飾状態を調節することが報告されている。そこでビタミンC処理によるC2C12細胞のDNAの修飾状態を検討した。その結果、ビタミンC処理は、C2C12細胞のDNAの修飾状態を調節することで、筋芽細胞の分化、増殖を促進することが明らかになった。 これらのことから、初年度に明らかにしたビタミンC不足による筋再生の遅延には、筋芽細胞におけるDNA修飾状態の変容が影響していることが示唆された。
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