研究課題/領域番号 |
19K19823
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
越野 裕太 北海道大学, 保健科学研究院, 客員研究員 (90748120)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 慢性足関節不安定症 / 足関節捻挫 / 筋力強化 / バランストレーニング / リハビリテーション |
研究実績の概要 |
足関節外側捻挫の後遺症である慢性足関節不安定症(CAI)例では,足関節機能のみならず股関節機能にも着目したリハビリテーションが必要であると考えられているものの,その効果は明らかではない.そこでCAI例に対する股関節筋力強化とバランストレーニングの治療効果の比較検討を行った. 対象はCAI例10名を無作為にバランストレーニング群および股関節筋力強化群に分類した.それぞれ1ヶ月間(週3回)の介入を行い,患者立脚型アウトカム(Foot and Ankle Ability Measure,Cumberland Ankle Instability Tool),Balance Error Scoring System,Y Balance Test,股関節外転・外旋筋力を介入前後で測定した. 股関節筋力強化群の股関節外転筋力,股関節外旋筋力,Y Balance Test(前方,後外方)は介入前に比し介入後で有意な向上を認めたものの,患者立脚型アウトカムに有意差を認めなかった.バランストレーニング群の介入後では股関節外転筋力に有意な向上を認め,Balance Error Scoring SystemおよびY Balance Test(後内方,後外方)は有意ではないものの改善傾向であった(P < 0.1).患者立脚型アウトカムには有意差を認めなかった.また,全アウトカムの介入前後の変化量には有意な群間差を認めなかった. 以上より,股関節筋力強化もしくはバランストレーニングによって股関節筋力およびバランス能力の部分的な改善を認めることが明らかとなったものの,両群間の介入効果には有意差を検出できなかった.また,患者立脚型の足関節機能や主観的足関節不安定性には有意な介入効果を認めなかったことから,介入プログラムの内容および強度の検討が必要であると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CAI例の股関節筋力強化とバランストレーニング単独の効果を比較検討することができたが,CAIの定義を満たす対象者を多く集めることができなかった.また,これまで行ったバランストレーニング介入の内容は過去の研究に比較し強度が低く,その内容も再検討する必要が発生したことから,介入研究の進行に遅延が生じた.また,購入予定であった床反力計の計測誤差が許容範囲外であったことから他の機器購入を検討する必要性が発生し,研究進捗に遅延が生じた.
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られたデータから股関節筋力強化単独の介入では患者立脚型の足関節機能や主観的足関節不安定性に対する有意な効果を認めないことが示唆されたことから,今後は股関節筋力強化およびバランストレーニングの併用の効果を検討する予定である.バランストレーニングの内容に関して,これまではバランスディスクを用いた立位姿勢保持のみのトレーニングが主であったことから,今後は姿勢保持中に下肢の運動を加えることで強度を上げた先行研究のプログラムに準じて行う予定である.また,アウトカムの一つであるバランス能力を臨床的評価だけでなく慣性計測装置を用いたより詳細な評価を加えることで細かな介入効果の検証を行う予定である.さらに,大学内の運動部に所属する学生を対象としてCAIの有無を調査することを広く行い,対象者数の拡大を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった可搬式床反力計の計測精度が本研究にとって不十分であると判断し,購入を中止したことが主な理由である.これにより研究計画が遅延し,他の計測機器の購入も保留にした.また,学会参加のためにオランダに行く予定であったが研究代表者の都合により急遽キャンセルとなった. 姿勢バランス評価のために可搬式床反力計の代わりに慣性計測装置およびこの周辺機器の購入を予定している.また,被験者への謝金,学会での成果発表の旅費,論文投稿費用としての使用を予定している.
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