2022年度は,慢性足関節不安定症(CAI)例に対する股関節機能に着目したリハビリテーションの効果を検証するために以下の検討を実施した。1つ目に,システマティックレビューおよびメタ分析を完了させ,足関節ではなく股関節に対する筋力強化が静的および動的バランスを有意に改善させることが示された.この結果はArchives of Physical Medicine and Rehabilitation誌に掲載された.2つ目に,昨年度から継続して実施した慣性センサーを用いた姿勢バランスの評価に関して,CAI群および健常群それぞれ16名を対象として解析した.その結果,CAIによる静的姿勢バランス不良を慣性センサーの3軸合成加速度で検出はできなかったものの,従来のBalance Error Scoring Systemでは検出できることが示された。この結果はJournal of Sports Science and Medicineに掲載された。3つ目に,7例のCAI例に対する股関節筋力強化+バランストレーニングと足関節筋力強化+バランストレーニングの効果を比較する無作為化比較試験を実施した.その結果,主観的足関節不安定性は股関節筋力強化群のみで有意に改善し,姿勢バランスは両群で有意に改善した.しかしながら,両群間でいかなる変数に関して有意差を認めなかった. 本研究課題におけるこれまでの一連の研究から,CAI例に対する股関節周囲の筋力強化を中心としたリハビリテーションは主観的足関節不安定性,姿勢バランス機能の改善に有効であり,足関節筋力強化を中心としたリハビリテーションと同等以上の効果がある可能性が示唆された.
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