研究課題/領域番号 |
19K19824
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
早坂 太希 旭川医科大学, 大学病院, 医員 (10838543)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 心筋骨格筋連関 / マイクロRNA / 虚血性心疾患 / 骨格筋萎縮 / サルコペニア |
研究実績の概要 |
マウスモデルにおいて、左冠動脈結紮による虚血再灌流によって得られた心筋虚血マウスを、1週間の尾懸垂による後肢廃用による筋委縮を誘導する群と誘導しない群に分けて心機能を観察した。筋萎縮を誘導した群では虚血再灌流処置をした翌日(day1)に落ちた左室駆出率はday35まで回復せず、一方で誘導しない群では5~10%程度の改善を認めた。筋萎縮による心臓に対する回復不全が示された結果であり、続いてこの機序を解明するべく血中のExosome内のmicro RNAに着目して網羅的な解析を行った。虚血再灌流の後、筋萎縮を誘導したことで上昇、あるいは低下したと考えられる候補のmicro RNAを数個選択し、実際に血中のExosomal-micro RNAをRT-PCRすることで絞り込みをおこなった。次に、このmicro RNAのmimicを用いてin vtroで実験を行った。ラットの新生仔心筋細胞を単離し、dish上でmicro RNA mimicをtransfectionした。その上で1%酸素条件で培養を行った。mimic群ではTUNEL法によるアポトーシスの検出をしたところcontrol群に比べて有意にアポトーシスを起こしている細胞が多く、さらにRT-PCRによってP53やCASPASE3といったアポトーシス関連遺伝子の発現亢進も認めた。以上から、筋萎縮による虚血心の回復不全の一因はこの候補micro RNAの上昇が関連していると考えられた。また、実際に臨床で問題となる心筋梗塞後の廃用性筋萎縮に対する治療の一つとしてAdipocyte derived stromal cells(ADSCs)を前述の虚血心-骨格筋筋萎縮マウスモデルの後肢骨格筋へ注射する細胞治療を行ったところ、ADSC群では左室駆出率の改善を認め、細胞治療の可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19流行における実験制限などの制約は受けつつも、実験全体としては概ね順調に経過している。
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今後の研究の推進方策 |
候補micro RNAの中から骨格筋あるいは心筋に関連の深いターゲット蛋白を持っているものに焦点を当てて研究を進める。NRVMsに対してmicro RNAのmimicをtransfectionした系でこのターゲット蛋白の動態をWestern blodによって証明することで、骨格筋萎縮誘導によって血中Exosome中に増加を示したmicroRNAが実際に心筋細胞における蛋白に影響を与えることを証明する。これらが証明されれば、骨格筋萎縮による心機能回復不全に対してこのmicro RNAが関与する一つの機序についての知見が得られる。 さらに、実際に臨床で問題となる心筋梗塞患者の廃用性骨格筋萎縮やそれに伴う心筋への悪影響を改善させることを目的とした、治療法の開発へと研究を進める。具体的には、既にADSCsを萎縮骨格筋に移植した虚血心ー骨格筋萎縮マウスのモデルでは、心機能の回復が得られることが我々の実験より明らかとなっており、この機序を網羅的な血中Exosome内のmicro RNA解析を行うことで候補micro RNAを検討する。結果として得られるmicro RNAは既に骨格筋萎縮モデルで同定したmicro RNAと同一あるいは関連が深いものである可能性もあるが、一方で新規の機序を介した心筋保護的な役割をするものである可能性もあり、双方を想定しつつ、その機序を明らかにするべく実験を展開していく予定である。 この萎縮骨格筋への細胞導入療法は心疾患をターゲットとした骨格筋治療という点で革新的な治療になると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
網羅的解析を外注する関係で次年度に繰越とした。
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