令和5年度では、令和4年度に測定環境および測定方法を構築した体性感覚誘発電位を評価として用いて、tDCSとTENSの同時刺激の効果について検討することを計画した。研究時間を十分に確保することが困難であり、健常成人を対象とした検討でも想定よりも遅れが生じたが、現在も含めて計測・解析中である。解析が完了している範囲での結果にはなるが、知覚痛覚定量分析装置による知覚がanodal-tDCSとTENSの同時刺激前後およびSham-tDCSとTENS条件(TENSのみ負荷)前後に変化することを確認できた。さらに神経生理学背景を感覚誘発電位で確認したところ、anodal-tDCS+TENS条件、Sham-tDCS+TENS条件の順に一次体性感覚野の興奮性が増加していることも確認でき、検討してきた刺激条件が適切であること、同時刺激とtDCS、TENSそれぞれの単独刺激の効果を検討する必要があることが確認できた。また、右上肢のアロディニア、感覚障害およびそれらに関連した運動障害を認めた中心性頸髄損傷症例に対してtDCSとTENSの同時刺激の即時的効果をビデオカメラを用いた運動機能、触覚の定量的評価、疼痛症状、体性感覚誘発電位の変化を検討した。ビデオカメラで記録した運動機能の評価では、運動麻痺筋に負荷をかけたことで疲労によると思われる一時的な運動パフォーマンスの低下を認めた。一方で、触覚検査では触覚機能の改善、アロディニア症状の消失を認めた。
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