本研究は、下肢スポーツ傷害の発生要因となる着地衝撃に関与する新たな神経筋機能の探索を行うことが目的である。 代表的なスポーツ損傷である前十字靭帯損傷再建術後のスポーツ復帰時期の着地衝撃の変化についてその現状把握を行った。その結果,前方への片脚ドロップジャンプ着地における着地衝撃に関与する指標の中で,アスレチックリハビリテーション期間の術後6-8か月の間で最大床反力到達時間は有意に延長していたが,最大床反力や荷重率(loading rate)は有意に変化を認めなかった。最大床反力や荷重率は,変化していなかったので,着地衝撃に関与する筋力発揮能力を検討し,リハビリテーションプログラムに取り入れることが必要であることが示唆された。 次に,健常者を対象に着地衝撃に関与する筋力発揮能力について検討した。適切なタイミングで瞬発的な筋力発揮ができる人は着地衝撃が小さいと仮説を立てて検証を行った。その結果,タイミングを調整する能力が要求されるカウントダウン合図で瞬発的な筋力発揮ができる人は,着地衝撃の指標である荷重率が有意に小さいことが明らかとなった。しかし,その機序については不明であり,今後はバイオメカニクス的検証も必要である。これらがさらに明らかになることによって,着地衝撃に関与する筋力発揮能力がより明確になる可能性がある。また,最終的には,明らかになった筋力発揮能力をより改善させる損傷予防トレーニングを開発することが今後の展望である。
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