研究実績の概要 |
本研究の目的は糖尿病性末梢神経障害合併2型糖尿病(DPN)患者の歩行中の足圧を軽減させる運動指導を開発することである。介入方法として音刺激を用い、歩行速度と歩容をコントロールする。 令和元年度は実際にDPN患者への介入として妥当な音刺激のテンポを明らかにするために健常成人(28名)を対象としたデータ測定を実施した。音刺激のテンポは対象者の自己快適速度時のケイデンスから基準となるテンポを算出し、そのテンポの0%、-5%、-10%、-15%、-20%の5条件とした。各条件下で10m歩行テストを実施し、歩行中の最大足底圧、身体重心の動揺性、外側広筋・大腿二頭筋・前脛骨筋・腓腹筋外側の筋活動量ならびに同時収縮、股関節・膝関節・足関節の屈曲伸展角度についてそれぞれ専用の機器を用いて測定した。音刺激のテンポと歩行速度には正の相関が認められ、音のテンポの低下に伴い歩行速度の低下が認められた。また拇指部、母指球部、前足部の最大足底圧については-20%の条件下で最も低い値を示した。さらに最大足底圧の変化と関係する因子を明らかにするために、音刺激0%の条件下と-20%の条件下の変化量を算出し、各指標との相関分析を実施した。その結果、拇指部と関係を示した指標として歩行速度(r=0.49, p<0.05)、歩行中の股関節最大伸展角度(r=0.67, p<0.05)、歩行中の足関節最大底屈角度(r=0.61, p<0.05)が認められた。また踵部と関係を示した指標として歩行速度(r=0.47, p<0.05)、ケイデンス(r=0.54, p<0.05)が認められた。以上のことから音刺激のテンポの低下により最大足底圧を軽減させることが可能であることが明らかとなった。
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