研究実績の概要 |
本研究の目的は糖尿病性末梢神経障害合併2型糖尿病(DPN)患者の歩行中の足圧を軽減させる運動指導を開発することである。介入方法として音刺激を用い、歩行速度と歩容をコントロールする。 令和2年度はCOVID-19の影響でDPN患者への介入が困難であったため、健常者を対象に足圧軽減を達成する介入として妥当な音刺激のテンポについて検証を重ねた。若年健常者14名を対象に一定の歩行速度において、歩幅を変化させた際の酸素摂取量と最大足底圧の変化を測定した。エネルギー消費量の指標として酸素摂取量を測定し、最大足底圧の測定にはインソール型足底圧測定機器を用い、母趾,母趾球,踵の3部位を測定した。測定条件は自己快適歩行時の歩幅を基準(0%)に歩幅を-20%,-10%,10%,20%と変化させた5条件とし、各条件の歩幅でトレッドミル上の歩行を5分間実施した。測定する条件の順番は乱数表を用いてランダムにて行った。条件間の比較にWilcoxonの符号付き順位検定を実施しBonferroni法にてP値の補正を実施した。その結果、歩幅0%に対して歩幅20%とすることで有意に酸素摂取量の増加を認めた。また最大足底圧は踵にて歩幅0%に対して歩幅-10%で有意に減少した。以上のことから、歩幅を変化させることはエネルギー消費量を増加させることが明らかになった。さらに歩幅を10%減らすことで踵の最大足底圧は減少することが示唆された。 最大足底圧が減少した理由として歩幅を減少させることで前方への推進力が低下し、歩行周期における初期接地と荷重応答期の前方へ進む重心の制動時に踵へかかる剪断力が低下したことが考えられる。 令和元年度に行った研究と合わせて、足圧軽減を目的とした介入時の音刺激は自己快適歩行の-10%のテンポにすることが妥当であると推察する。
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