本研究の目的は糖尿病性末梢神経障害合併2型糖尿病(DPN)患者の歩行中の足圧を軽減させる運動指導を開発することである。 対象をDPN患者55名(音刺激群29名、Control群26名)とした。介入期間は1週間とし、両群に対し理学療法士が標準的な運動指導を行った。また音刺激群には電子メトロノームを用いて自己快適速度のテンポから-10%にした音刺激の歩行を実施した。歩行運動は両群ともに毎日毎食後実施した。歩行評価は介入前後に自己快適速度による10m歩行テストを実施し、歩行速度、歩行動揺性、最大足底圧の測定を行った。 両群の介入前後の変化量の比較では、歩行速度において音刺激群-0.08±0.13 m/sec、Control群0.02±0.06にて有意に音刺激群の方が減少した。歩行動揺性では音刺激群-0.27±1.07 m/sec2、Control群-0.19±0.77 m/sec2であり有意差を認めなかった。最大足底圧では母趾において音刺激群-2.79±6.40N、Control群2.29±6.40N、踵において音刺激群-4.35±6.69N、Control群2.13±4.94Nとなり、どちらの部位も音刺激群にて低値を示した。一方で母趾球では音刺激群-0.36±3.98N、Control群0.58±7.33Nとなり有意差を認めなかった。 最大足底圧は歩行速度の影響を受けることが報告されており、音刺激群では刺激のテンポを下げたことで歩行速度が低下したことで最大足底圧の母趾、踵にて減少が見られたと考えられる。一方Control群は歩行速度が上昇する傾向が見られており、踵の最大足底圧の増加に影響を与えた可能性が考えられる 以上のことからDPN患者の最大足底圧には低速音刺激を用いた運動療法により有用である可能性が考えられる。
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