本研究では、心血管疾患により、胸骨正中切開前後を含めた脊柱アライメント・可動域の長期的な変化の観察と変化を与える周術期の要因分析を行った。胸骨正中切開術前後の変化については、術後に胸椎を中心とした後弯の増加・可動域の低下と全体の前傾姿勢がみられた。消化器癌により腹部手術を行った場合との比較も行い、胸部手術では胸椎を中心とした変化、腹部手術を行った場合は腰椎を中心とした変化であることが明らかになり、手術部位に応じた変化への対応が必要と考えられた。周術期の要因分析としては、術前要因、術中要因、術後要因からそれぞれ複数要因を挙げて検討を行った。最も影響を与える要因としては、術後3日目のC反応性蛋白(CRP)が挙げられた。CRPは、炎症の程度を表す指標であり、48-72時間でピークを迎える。炎症が身体に与える影響は様々考えられるが、いかに術後の炎症を抑えることができるかが脊柱アライメント・可動域の変化の予防に重要であること示唆された。 長期的変化として、胸骨正中切開後の胸骨が癒合する時期である3ヵ月以降の期間を対象として帳をした結果、統計上有意な差はみられなかった。しかしながら、術後の変化と骨癒合時期になっても改善しきれていない傾向がみられており、より変化が起きやすい対象者の特徴について検討するなど、さらなる調査が必要であると考える。調査期間は異なるが腹部手術でも疼痛軽減後に姿勢が改善しているか調査したところ、改善しきれていない結果が出ており、今後の介入などを検討する必要性について示唆された。 上記内容に関しては複数の学会発表、国内外の論文投稿を通して公表済みである。
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