本研究の目的は『末梢の前庭障害患者に対する身体機能・めまいの改善を目指す新たな前庭リハビリテーションプログラムの開発、その効果を検証すること』である。 本年度は、前庭リハビリの効果に影響を与える要因の検討、急性期前庭神経炎に対する前庭リハビリの実施状況、動画サービスを用いた前庭リハビリテーションの効果に関する研究を行った。1つ目の前庭リハビリの効果に影響を与える要因の検討では、前庭リハビリによってめまいに関連した日常生活の関連度は改善した。また、日常生活の自信度が前庭リハビリの効果に影響を与えることが明らかとなった。このことから、前庭リハビリを行う際は、心理的なケアも必要であるかもしれない。2つ目の急性期前庭神経炎に対する前庭リハビリの実施状況に関する研究では、急性期前庭神経炎に対して前庭リハビリは7.2%の患者にしか実施されておらず、他のリハビリテーション対象疾患と比較して少ない結果になった。また、前庭神経炎患者の多くが入院する耳鼻科からのリハビリの依頼が少ない結果となった。この結果より、日本では前庭リハビリが普及していないことが明らかとなった。3つ目の動画サービスを用いた前庭リハビリテーションの効果に関する研究では、動画サービスの作成を行い、現在ランダム化比較試験が進行中である。中間報告の結果では、動画サービスを使用した前庭リハビリテーション群がパンフレットのみの群と比べて、運動の継続率、自宅での運動時間の増加が認められている。
|