研究実績の概要 |
本研究の目的は、妊娠中、産後の体幹筋機能と腰痛との関係を明らかにし、腰痛予防法に役立てることである。 横断的に測定した者は、妊婦34名、産褥婦35名であり、妊娠中、産後1,2か月、3,4カ月、5,6か月と経時的に追えた者は11名である。体幹筋損傷の実態について、妊娠期、妊娠週と腹直筋間距離との間に正の相関を認め(r=0.54, p<0.01)、腹直筋離開の有症率は、妊娠後期で80%、産後3か月で14%、産後7か月では7%であった。 また、腹直筋離開を改善する方法として、ドローイン、頭部挙上の2課題を行った際の、腹直筋離開の変化を測定した結果、ドローインで腹直筋離開幅が狭くなり、頭部挙上では広がった者は21.3%、ドローインで広がり、頭部挙上で狭くなった者が27.7%、2課題ともに狭くなった者は27.7%、2課題ともに広がった者は23.4%と、被検者により様々であり、一定の結果ではないことが分かった。 腰部骨盤帯痛の有訴率は、妊娠後期には80%であったが、産後3か月で38%まで減少、産後6か月では再び88%まで上昇した。これらは横断的手法による解析であり、現在は縦断的手法による解析を進めている。 また、妊娠中の腰部骨盤帯痛の強度(Numerical Rating Scale)は、運動時における腹直筋間距離の変化量と正の相関を認めた(r=0.63, p<0.01)が、産後1か月時点においては、相関を認めなかった(r=0.18, p=0.26)。このことから、妊娠中と産後の腰痛因子は異なると考えた。 産褥期である産後4~8週の腰部骨盤帯痛発生因子について、従属変数を腰部骨盤帯痛の有無、独立変数を産婦の年齢、身長、体重、過去の出産回数、妊娠時の疼痛の強さ(NRS)、腹直筋間距離、押圧に対する弾性力として二項ロジスティック回帰分析を行ったが、有意差は認めず、リスク因子として抽出されなかった。
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