研究課題/領域番号 |
19K19850
|
研究機関 | 聖隷クリストファー大学 |
研究代表者 |
俵 祐一 聖隷クリストファー大学, リハビリテーション学部, 准教授 (80781971)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 呼気筋トレーニング / 嚥下機能 / 最大舌圧 / 咽頭筋 |
研究実績の概要 |
摂食嚥下障害患者は誤嚥を起こしやすいため肺炎のリスクが高く,肺炎を合併した場合,従来の摂食嚥下リハビリテーションによる摂食嚥下機能改善に乏しいことが示されている.そのため,何らかの新しいアプローチが必要である.近年,摂食嚥下障害に対して呼気筋トレーニング(以下EMT)の有効性が示されてきたが,摂食嚥下機能への影響のメカニズムは十分解明されていない.そこで,令和2年度に高齢健常者を対象としたEMTによる舌および咽頭部の筋機能と摂食嚥下機能との関係性の検討を進めたが,対象者が十分集まらなかったため,令和3年度も引き続きリクルートを継続し検討を行った. 対象は静岡県西部地区に在住の高齢健常者42例(73.4±5.0歳、男:女=12:30)とした.対象者をEMTを実施するEMT群と何も介入を行わない対照群の2群に無作為に分けた.観察期間は4週間とし,EMT群は最大呼気圧の75%負荷で5回1セットを1日5セット,週5日実施した.両群とも観察期間の前後で呼吸筋力,肺機能,咳嗽時最大呼気流量,嚥下機能スクリーニング検査として反復唾液嚥下テスト,最大舌圧,舌骨上筋群の筋電図および咽頭部を含めた超音波検査を実施した.あわせて、これらの項目について2群間で比較検討した. EMT群においては全例4週間のEMT実施に問題を認めなかった.4週間前後での比較において,EMT群の方で最大呼気圧,最大吸気圧,咳嗽時最大呼気流量,反復唾液嚥下テスト,最大舌圧において有意な増加を示した.また,表面筋電計によるEMT実施時の舌骨上筋群の筋活動,超音波検査によるオトガイ舌骨筋の収縮率および咽頭側壁運動において有意な変化を認めたが,対照群では有意な変化は認めなかった.2群間の比較では,最大呼気圧,咳嗽時最大流量,最大舌圧,呼気筋負荷時のオトガイ舌骨筋収縮の変化率において2群間で有意差を認め,EMT群の方が高かった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度は健常者のリクルートは何とか可能であったが,2021年度の研究課題としていた摂食嚥下障害患者への介入について,COVID-19の影響による協力いただく施設の体制変更や研究責任者の体調不良等もあり,着手することができなかった. 現在研究開始に向けて研究協力機関との調整を行っており,許可が下り次第取り掛かる予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
研究対象者のリクルートや調査実施方法について研究協力機関と協議を進め,許可が得られ次第着手する予定である. その際は感染対策を厳重に徹底し,高齢健常者と同様の手法で摂食嚥下障害患者のデータ収集を行い,データがそろい次第解析に取り掛かる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は計画が順調に進まなかったこともあり,研究打合せや学会参加等にかかる旅費を使用する機会が生じなかったため,翌年度の旅費に補填する予定である.
|