研究課題/領域番号 |
19K19851
|
研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
谷川 広樹 藤田医科大学, 保健学研究科, 講師 (90705013)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 脊髄神経 / 電気刺激 / 磁気刺激 / 脳卒中 / 歩行再建 |
研究実績の概要 |
脊髄の硬膜外電気刺激によって下肢筋に歩行様の筋活動と関節運動が観察されたことから、ヒトの第2腰髄レベルに、上位中枢神経からの入力がなくても下肢に歩行様の周期的放電を発せさせる神経機構が存在すると報告された(Dimitrijevic, et al. 1998)。以降、経皮的に脊髄神経を電気刺激しても同様の結果が得られたという報告がある(Gerasimenko Y, et al. 2010, 2015)。 2019年度、健常者を対象として電気刺激を用いた追試験を実施したが、先行研究と同様の結果は得られなかった。2020年度は、健常者を対象として、磁気刺激装置Pathleader(株式会社IFG)を用いて追試験を実施した。磁気刺激は、電気刺激よりも疼痛が少なく、刺激強度を増強させることができる。しかし、やはり先行研究と同様の結果は得られなかった。その原因として、刺激強度が不十分であったことと、対象者の下肢の免荷方法が考えられた。そこで、2021年度は下肢の免荷装置を作製することに取り組み、磁気刺激装置は、より強度を増強できるmagstim Rapid 2 (Magstim Co. Ltd.,UK)を用いることを検討した。 懸垂装置は、側臥位とした対象の両下肢の重量を免荷でき、歩行様運動が生じた時に下肢同士が干渉しないよう、それぞれが独立した機構であること、懸垂装置自体が動揺しないように固定性が充分であること、などを考慮し、試行錯誤を経て作製した。本装置を用いて、健常者1名に対してmagstim Rapid 2を用いた脊髄神経刺激を試みたところ、側臥位とした対象の上位腰髄付近の刺激中、上側の下肢が屈曲、下側の下肢が伸展する反応が見られた。先行研究のような屈曲と伸展を繰り返す歩行様の交互運動ではなかったものの、今後の研究の手がかりが得られたため、引き続き効果検証を進める。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020-2021年度の研究計画は、脊髄神経を経皮的に電気刺激することで下肢筋に歩行様の筋活動と関節運動を認めたという先行研究(Gerasimenko Y, et al. 2010, 2015)の追実験を行い、先行研究と同様、もしくは類似した結果が得られた後、電気刺激を磁気刺激に置き換え、得られる反応の違いを検討することであった。しかし、健常人を対象として追実験を行っても、未だ先行研究と同様の結果を得るに至っていない。現在、先行研究と同様、もしくは類似した結果を得るための実験環境や条件を検証中である。そのため、慢性期の歩行可能な脳血管障害患者を対象とした磁気刺激の効果検証にはまだ着手できていない。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は、電気刺激を用いて先行研究の追実験を行ったが同様の結果が得られず、その理由の1つとして刺激強度の不足が考えられた。そのため、2020年度は電気刺激を磁気刺激に置き換え、同様に先行研究の追実験を行った。磁気刺激は電気刺激と比較して疼痛が少ないことが利点であり、そのため、刺激強度を上げることが可能である。磁気刺激装置は、Pathleader(株式会社IFG)を用いた。磁気刺激は電気刺激の際に必要な電極を対象の皮膚に貼る必要がなく、刺激コイルの位置を変えるだけで簡単に刺激部位を変えることができるため、刺激強度とともに刺激部位を適宜変更し、実験を行った。しかし、磁気刺激装置Pathleaderの最大出力でどの部位の脊髄神経を刺激しても、先行研究と同様の結果は得られなかった。その原因として、刺激強度がまだ不十分であることと、対象者の下肢の免荷方法が考えられたため、2021年度は下肢の懸垂装置を作製することに取り組み、磁気刺激装置は、より強度を増強できるmagstim Rapid 2 (Magstim Co. Ltd.,UK)を用いることを検討した。作製した懸垂装置を用いて、健常者1名に対してmagstim Rapid 2を用いた脊髄神経刺激を試みたところ、側臥位とした対象の上位腰髄付近の刺激中、上側の下肢が屈曲、下側の下肢が伸展する反応が見られた。先行研究のような屈曲と伸展を繰り返す歩行様の交互運動ではなかったものの、今後の研究の手がかりが得られた。次年度はこの懸垂装置を用いて、引き続き脊髄磁気刺激の効果検証および適切な刺激部位、強度などの検討を進める。
|