研究実績の概要 |
2019年度から2020年度:磁気刺激装置Pathleaderの最大出力で脊髄神経を刺激しても、先行研究と同様の結果は得られなかった。一方で、より強い磁気刺激が可能なmagstimを使用すると、歩行様の交互運動ではないものの、両下肢に筋活動が生じ、関節運動が生じることが確認できた。
2021年度:作製した懸垂装置を用いて、健常者1名に対してmagstim Rapid 2を用いた脊髄神経刺激を試みたところ、側臥位とした対象の上位腰髄付近の刺激中、上側の下肢が屈曲、下側の下肢が伸展する反応が見られた。先行研究のような屈曲と伸展を繰り返す歩行様の交互運動ではなかったものの、手がかりが得られた。
2022年度:8名の対象者のうち、magstimで刺激した際に下肢に交互運動が観察されたのが2名であった。その2名において、両者ともTh11-Th12間の刺激で交互運動が生じ、1名がTh12-L1間の刺激でも生じた。それ以外の対象と部位においては、両側下肢が同時に伸展する反応があったが、交互運動は生じなかった。Magstimによる刺激強度は、最大出力の35から60%であった。Pathleaderによる刺激では、全対象が機器の最大出力で刺激したが、交互運動を認めた対象はいなかった。交互運動が生じた2例と、その他6名の年齢、身長、体重には違いはなく、身体的特徴による反応の違いはなかったと考えた。そのうえで、脊髄刺激により交互運動を生じさせるためには、ある程度の強刺激が必要であるということが明らかになった。先行研究においても、同様の刺激で下肢に交互運動が生じたのは対象者の1割程度(Gerasimenko Y, et al. J Neurophysiol. 2015.)と報告しているが、中枢神経疾患に応用するために反応の有無が何による影響なのかを明らかにする必要がある。
|