神経因性疼痛は中枢神経または末梢神経損傷などを契機に発症し、神経細胞が障害され、脊髄後角のミクログリアが活性化、炎症性物質の産生や神経細胞の機能異常により疼痛を引き起こすことが報告されているが、効果的に治療することが非常に困難である。神経因性疼痛の薬理学的治療は限られており、患者の40~60%が疼痛の部分的緩和を得ていないのが現状である。治療に対するヒトや動物における治療効果、メカニズムについて様々な報告がされているが未だ不明瞭な点が多い。 本研究の目的は、神経因性疼痛におけるトレッドミル運動の疼痛緩和効果とそのメカニズムを明らかにするとともに運動療法の科学的根拠を明らかにし、効果的な運動頻度を調べることである。さらに運動頻度を変えることにより、疼痛緩和効果の作用の違いがあるのかを調べ、理学療法分野における神経因性疼痛に対する運動療法の有効性を細胞レベルで明らかにすることである。そのため、以下の実験・解析を行なった。 ①神経因性モデルを作成し小動物用トレッドミルによる運動介入を行う。環境適応のためCCI前3日間、20m/min、15minで介入し、術後3日目より20m/min、15min、以降は20m/min、30minの運動介入を実施。さらに運動の頻度を週5回、3回と介入回数を2つのグループに無作為に分ける。 ②運動療法の疼痛緩和効果と脳と脊髄に及ぼす影響を組織学的・免疫組織学的に解明することであり、脊髄では脊髄後角におけるグリア細胞の変化や神経因性疼痛に関連する因子としてCCR2及びTRAF6の運動療法介入における変化を検証した。脳では海馬に着目して、神経新生細胞マーカーであるDCX及び神経新生に必要な中間前駆細胞のマーカーであるProx1の変化について検証を行い、疼痛と記憶の関連性についての検証を行った。
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