研究実績の概要 |
1.我々は、脳卒中片麻痺患者において,立位バランス能力と関連のある歩行時体幹運動左右非対称性の評価指標としてLissajous Index(以下,LI)が有用であることを明らかにした.LIは歩行中の体幹加速度から算出するが,杖を使用した歩行(以下,杖歩行)では杖を動かす時に生じる加速度が含まれる可能性があるため,今まで杖を使用しない歩行(以下,杖なし歩行)のみで測定を行ってきた.しかし,臨床において杖なし歩行が困難な脳卒中片麻痺患者は多い.そこで,脳卒中片麻痺患者の杖なし歩行および杖歩行のLIを比較,検討することとした.対象者は脳卒中片麻痺患者23名(平均年齢53歳)とし,3軸加速度計を腰部第3腰椎の高さに装着して快適歩行速度で10m歩行を行った.歩行は杖なし歩行と杖歩行の2条件で実施した.得られた左右と上下の加速度からLIを算出した.LIは数値が大きいほど左右非対称であることを表すものである.平均LIは杖なし歩行で47.5±31.3%,杖歩行で44.0±31.3%であり,両条件間で有意差はみられなかった.杖なし歩行と杖歩行のLIの級内相関係数は0.855であった.Bland-Altman分析の結果,杖なし歩行と杖歩行の間に系統誤差はみられなかった. 2.脳卒中患者の歩行左右非対称性を詳細に評価するためにステップの左右非対称性も算出した。使用したのは靴に内蔵する荷重センサーで、加速度の測定と同時に行った。ステップの左右非対称性はSymmetry Index(以下SI)という指標を用いた。横断的な検討を行い、脳卒中片麻痺患者30名(平均年齢61歳)を対象とし、SIと呼吸機能、呼吸筋力との相関関係を検討したところ、吸気筋力、呼気筋力と有意な相関関係が認められた(rs=-0.386, p=0.042, rs=-0.392, p=0.047)。
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