研究課題
慢性疼痛の機序は、脳内ネットワークの変調が推定されているが、中枢神経系内の運動と疼痛認知に関わる領域間の関連性の理解は不十分である。また、慢性疼痛の評価は、疼痛強度や社会心理面だけでなく、日常生活動作(activities of daily living; ADL)などの身体活動を含む多面的評価が必要だが、身体活動の評価に関わる知見は十分ではなく、その定量的な評価法も確立されていない。本研究では、慢性疼痛患者を対象として、身体活動量を計測、そして電気生理学的手法を用いて中枢神経系の感覚・運動皮質の活動を客観的・定量的に計測する。電気生理学的手法を用いた研究では、ナビゲーションガイド下に経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation; TMS)を行うことで運動野をマッピングし、疼痛と運動障害、運動野の機能局在、皮質興奮性との関連性を検討した。上肢に神経障害性疼痛を呈する13例を対象とし、疼痛が強い症例において,運動障害は軽症であること、皮質興奮性は半球間の差が少ない傾向であることが考えられた。疼痛尺度と活動量計を用いた多面的な評価では、脊髄刺激療法(spinal cord stimulation; SCS)トライアルを施行した神経障害性疼痛患者を対象にし、疼痛尺度・社会心理面の評価に加え、歩行速度や活動量計を用いた運動機能面の評価を多面的に行い、SCSの除痛効果と身体活動量との関連について検討した。また、中枢性脳卒中後疼痛患者においては、疼痛尺度、運動障害そしてADL・QOLの多面的評価を実施しADLやQOLに関連する要因を検討した。さらに、中枢性脳卒中後疼痛と脊髄損傷後神経障害性疼痛との臨床的特徴を比較し、疼痛発症時期が異なるが、疼痛強度、ADL・QOL、心理などの評価では著しい違いがないことが示唆された。
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